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The Oxford Handbook of Law and Politics

【英語原文】

A. Caldeira, eds., The Oxford Handbook of Law and Politics, Oxford University, 2008, pp.321-322.

【日本語訳文】

民主主義を形成する制度構造と法的枠組みは、民主主義の実現と経験を劇的に形成させる。このことは、立法府を比例代表制あるいは相対多数にするか、行政―立法の関係を議会あるいは分権にするかという、最も目に見えてマクロな制度的選択に当てはまる。また、これも目に見えにくい多くの選択にも当てはまる。例えば、政党を構成する規制と法的ルールのあり方、選挙区の設計方法や選挙が管理されて潜在的に爆発的な選挙紛争が解決される制度的構造やルール、法律が選挙資金を調達することを認める方法、多数派と少数派との合意を承認する制度や法律など。ここ20年間の政治学と法学における「新制度主義」は、理論的及び実証的な側面において重要な洞察を生み出した。

ここ20年間における二つの進展が、すでにこれらの問題に関する研究を活性化させる役割を果たしてきた。今後数年間、学術的研究の最前線を決定づける可能性がさらに高まっている。第一に、1985年以来、民主主義国家の数が倍増したことである。南アフリカ、旧ソ連諸国、ラテンアメリカなど、様々な状況において、こういう民主国家が自覚的に想像されたことで、立法選挙を特定の方法で構成することの影響など、民主主義制度の設計における基礎的な問題が改めて緊急性を帯びてきた。さらに、このように新しい民主主義国家(非民主国家も含まれる)が急増したことで、民主主義の法的構造に関する比較研究が、より可能で、興味深く、必要なものとなる。

第二に、同時期に世界中の裁判所が、民主的な制度やプロセスの構造を監督するという、より積極的な役割を担うようになったことである。アメリカの最高裁判所は1960年代以降、一人一票の原則という新たに発表された憲法上の原則に沿って、ほぼすべての代表機関を再編成することを要求し、新しい役割に着手した。憲法を適用する最高裁判所が、ここ20年間ほどの間に、アメリカにおける民主主義の本質的構造を決定する上で、ますます中心的な役割を担うようになった。同様に、他国の国内裁判所や欧州人権裁判所のような超国家裁判所も、民主的統治の基本構造を判断し、見直すことを求められる。私はこのような一般的な動きを「民衆主義政治の合憲化」と呼んでいる。何世代にもわたり、政治的妥協、交渉、対立、和解の対象であった民主主義の構造に関する問題が、司法の問題になった。民主主義の実現の規範的・実証的分析における法学と政治学重なりは、このように一層大事になった。

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