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【叡啓大学講義レポート 後編】デジファブプロジェクトの課題点とレバレッジポイント

こんにちは、LODGEの中島です。

今年1月より全2回で、広島の叡啓大学にてデジタルファブリケーションと素材の地産地消をテーマにした演習講義を開催しています。

今回は最終回ということで、これまでに取り組んだリサーチの結果をまとめ、発表してもらいました。

本講義は「課題解決演習」です。1か月のデスクトップリサーチ、フィールドワークを通じてテーマを客観的に分析し、問題の本質を突き止めることを目的としました。

前回提示したテーマはこちら

How should we promote upcycling (bottom-up recycling) in daily life?
(市民がデジタルファブリケーションを用いて日常的にアップサイクルを行う社会を実現するにはどうすればよいか)

学生たちは4つのチームに分かれ、市民の手によるアップサイクルのどこに課題があるのかを、授業で教わった思考フォーマットに沿って考えました。
この記事では、ワークのプロセスを追いながら、発表内容を少し紹介しようと思います。

フィールドワーク


各チームが決定した調査テーマをより深めるために、教室をでて企業や専門家に聞き込みを行いました。
「デジファブと教育」をテーマに選んだチームは地域の高校の先生にヒアリングを行い、「アップサイクルの意義が本当にあるのか」を選んだチームはリサイクル工場や環境学の教授に聞き込みへ向かいました。


Affinity Diagram(親和図)

まずテーマを項目別に分け、類似点を見つけます。
データの中で類似点を見つけてグループ化することで、複雑な調査やアイデアを処理しやすくするのが目的です。

例えばこちらのチームは、企業、個人、とグループ化した上でアップサイクルが広まらない課題点を洗い出していますが、「認知」「リソース不足」といったワードが頻出していることがわかります。

Affinity Diagramの理解についてはこの辺りの記事が参考になりました


Casual Loop Diagram(因果ループ図)

続いてアップサイクルを取り巻く活動をループ図に落とし込みます。

ニワトリの数が増えれば、タマゴが増え、タマゴが増えればニワトリが増えるので、このシステムは無限の増加ループとなる。しかし現実にはニワトリの寿命や、タマゴの不良など、さまざまな要因が働き、無限ループにはならない

+(プラス)や -(マイナス)はこの活動が生のフィードバックを与えているか、負のフィードバックを与えているかを示しています。

この表記は生き物の増減、お金の増減といった世の中の全ての事象をシステムとして捉えるという考え方に起因しています。例えば売り上げを増やしたいと思えば正のフィードバックループをより強化する方法を考える、ということになります。

このチームでは、デジタルファブリケーションを使ったアップサイクルを取り巻く因果図をまとめていました。結論として、デジタルファブリケーション機器を使って作られた製品の価値が、全体のループに負の効果を与えている(レバレッジ・ポイント)と分析しました。

チームはここから、リサイクル製品の価値や品質・ストーリーこそが活動の成否であると結論づけました。現状はビジネスとしても成り立っておらず、また一般の人にとっては買う動機も使う動機も現状不明瞭と指摘していました。(身も蓋もない結論ではありますが、実際自分達が次の打ち手を考えるときも「製品の質」を最も重要と捉えることが多いので、この視点は共感できました)

発表を通して感じたこと

普段はあまりこのようなフレームワークに沿って自分達の取り組みを議論することがないのですが、改めてこうして活動を図にまとめてみると、「この部分はやり尽くしたな」「この部分はもう少し深掘りのしがいがありそうだな」と、新たに気づくこともありました。

発表の内容自体はかなりシビアでしたが、学生一人一人と話をすると、ファブリケーションや、地域に根ざした活動をすることに興味がある方が多く、Fablabでインターンをしたいという声も聞くこともできました。

デジタルファブリケーションとオープンソースの知識を駆使して社会課題に取り組むというテーマでまたお話しする機会があれば、ぜひ挑戦させてもらいたいと思います。




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