山口県 県庁職員が1年間ヤフーに出向してみて思ったこと【インタビュー】
こんにちは。ヤフーのオープンコラボレーションハブ「LODGE」です。
今回は、山口県庁からヤフーのデータソリューション事業本部へ出向中の永岡慎也さんのインタビューをご紹介します。1年間の出向期間を経て、2022年4月から山口県庁に戻る永岡さん。ヤフーで働きながらどんなことを感じていたのか、お話を伺いました。
取材、文:Maiko Takeguchi(LODGE)
2022年3月24日 ヤフー本社ビル17階 LODGEにて
※写真撮影時のみマスクを外しています
「出向中、業務で書いた紙は1枚もありませんでした」
ーー 今日はよろしくお願いします。対面では初めまして、ですね。
永岡さん:
お疲れ様です。そうですね、ずっとリモートでのお話でしたね。
ーー まもなく出向が終了し山口県庁にお戻りになるわけですが、最初にヤフーへの出向の仕組みについて教えてください。立候補されたのですか?
永岡さん:
もともとは国交省など国の機関で働いてみたい想いがあり、出向希望を出していました。そんな時に県の上司から「ヤフーへ行ってきてください」と辞令がありました。びっくりしました。「ヤフーですか?」と。
直前まで防災危機管理課にいて、ITとは無縁の業務をしていました。自治体からヤフーのデータソリューション事業本部への出向は僕が初めてのケースだと聞いています。
ヤフーでは主に自宅でリモートワークで、週に一度程度出勤していました。山口県庁では極力在宅勤務という流れはありつつも、ほとんどが出勤していました。チャットボットは2021年の冬に導入されて、Zoomは出向する直前に初めて使いました。
データソリューション事業本部では、ヤフーのビッグデータ分析ツール「DS.INSIGHT」を使いながら、主に自治体の方向けの業務を担当しました。最初は出来るだけ多くの会議に出席して、議事録をとりながら業務を覚えていった感じです。最初の1か月はリーダーに面倒を見てもらいました。
ーー ほぼフルリモートで、コミュニケーションに戸惑いはありませんでしたか?
永岡さん:
戸惑いは特にありませんでした。定例会議や1on1(上司と部下が1対1で行う定期的な面談)でまとまった時間で相談や情報共有ができたので、そこで不安を解決できました。特に大きな問題はなかったです。
ーー 驚いたこと、印象的だったことがあれば教えてください。
永岡さん:
いろいろありますが、紙を全く使わないこと。こちらに来て書いた紙は、(出向元の)県から届いた申請書のみです。業務で書いた紙は1枚もありませんでした。押印も一度もしませんでした。もちろんその裏で、印鑑を押してくださったり、サポートしてくださる方々がいたので出来たわけですが。
新鮮だったのは、リスクマネジメントやコンプライアンスの研修が手厚いことです。各個人に資料を共有して、クイズ形式で理解を促すかたちでした。受講期限が迫っているなどのアラートも来ます。
県庁ではインフォメーションで注意喚起されるかたちが多く、重要なものは各課から代表が研修に出て、皆に共有するスタイルでした。
また、自治体には「グループ会社」という概念がないので、ヤフー、LINE、ZOZOなどグループ会社の社員が集まって受講した、Zアカデミアの研修が印象的でした。参加した研修のテーマはプレゼンテーションや、ファシリテーションの極意などです。いろいろな会社の方と、ブレインストーミングをするのが面白かったです。発言を否定しないルールのなか、思うままに話し、受け止めてもらい、とても刺激的でした。
自治体だと、近隣の県の担当者との事例共有、報告会、意見交換を年に数回おこなう程度でした。
「言葉が分からない、やばい」から始まった、学ぶ習慣
ーー では、業務上特に困ったことなどはありましたか?
永岡さん:
やっぱりIT用語が多いこと。議事録を作るときに聞き取れない、分からない言葉だらけで、やばいなと思いました。例えば「ホスト権限」とか。だいぶ前に解決しましたが、「リテンション」(保持・維持)も分からなかったです。
それで、業務外でITについて勉強する習慣がつきました。「ITパスポート試験」という資格の勉強を始めました。今も勉強を続けていて、秋に「基本情報技術者試験」というエンジニアの方向けの資格を受けて、合格できました。アルゴリズムの問題は特に難しかったです。ほかにも、経営戦略、プロジェクトマネジメント、システム監査、情報セキュリティなど、幅広く学びました。
そうやって勉強したことが、業務で後から分かったりして面白かったですし、知れてよかったなと思っています。ただ、テスト勉強みたいに一時的な暗記になってしまっているので、実践して活用していきたいです。
ーー 勉強熱心ですね。ご自分で調べて勉強していたのですか?
ありがとうございます、自分で調べました。危機感から勉強できる習慣がついたことは良かったです。ヤフーに来たからこそ、きっかけができたのかなと思っています。
「肌感覚じゃなく、数字で分かる」ビッグデータ分析ツールで感じたこと
ーー ビッグデータ分析ツール「DS.INSIGHT」の感想を教えてください
永岡さん:
ツールを初めて触ったときには、今まで自分が知らなかったことがこんなに簡単に知れるんだ、という驚きがありましたね。分かりやすい例でいうと、「プロテイン」の検索結果。プロテインは男性が検索しているイメージがありますけど、実は女性のほうが検索割合が高く、美容目的の検索が多いことが分かりました。さらに、他県に比べて山口県での「プロテイン」検索比率が高いという、意外な事実も分かって面白かったです。
あとは、コロナ禍でどの自治体も観光地の人流が半減するなか、山口県のある温泉観光地は大きく減少していないことが分かったりもしました。
「GoToトラベル」や県の観光補助の事業を並行した効果だとは思うのですが、珍しい事例でした。人流データからこんなことが分かるのは面白いですよね。
何よりも、効果検証が目に見えるのが面白いです。現地の人も肌感覚では人流の増減が分かっていると思いますが、実際に数値としてはどうなのか、定量化できるのが便利だと思いました。
ーー 主に自治体向けの「DS.INSIGHT」の商談、セミナーがメイン業務でしたね。
永岡さん:
そうです。商談にあたって、自治体さんについて事前に分析して「『DS.INSIGHT』ではこんなことができますよ」と資料を作っていました。先方が観光の方であれば観光地のことを事前に調べて、30代の男性が検索しています、コロナでこのくらい減少しています、などお話していました。その自治体に寄り添った資料で説明したほうが反応してくださいます。
自治体の方に親近感を持ってもらえたらと思い、商談の際は、僕が山口県庁から来ている話は毎回しています。自治体目線の提案をしてもらいたいと、ヤフー側からも言われています。
自分の経験もお話していました。以前、防災危機管理課にいたので、具体的に防災の例をお話すると相手の方が深く頷いてくださったり。どこの自治体もコロナ対策、防災対策は力を入れていく必要があるので、注目されやすいと思っています。
経験上、話を聞いた担当者が実際にあとで上司にどう説明するかを意識していました。ヤフーの方はデータに詳しい方ばかりですが、自治体の方はそうではない場合もありますので。担当者がどうすればうまく説明できるかを意識して、なるべく簡単な言葉でお話できるように工夫しました。
ツールの強みを明確にして、なおかつ担当者が「なぜヤフーのDS.INSIGHTがよいのか」を説明できるようにしました。
ーー 印象に残ったセミナーはありますか?
永岡さん:
昨年6月と7月に実施した自治体DXセミナーです。「誰でもできる」をテーマに、自治体を対象に実施しました。何を伝えるか、テーマ設定から企画したので、とてもよい経験になりました。
資料も自分で作りましたが、最初は時間がかかりました。県にいるときはWordでやっていて、Power Pointを使うことはほとんどなかったんです。今思うと、当時作っていた資料はめちゃくちゃだなって思います。当時は満足していましたが……。企画も資料作りも、上長がいろいろ教えてくれました。
一回目は約100名の方からお申し込みがあり、セミナーの事後アンケートでも「満足度が高かった」「『DS.INSIGHT』に興味が湧いた」という声が多くみられました。実際、複数の自治体の方からお申し込みもあり、「やってよかったな」と思いました。
脱線しますが、Facebook広告でセミナーの告知を偶然知人が見て「お前出てるやん」って送ってきたのには笑えました。僕は告知ページに掲載があるとは知っていましたが、Facebookの広告に出ているとは知らなかったので、なんでだ!?とびっくりしました(笑)。
初対面の方に「広告で見たことがある」と言われたりもしました。今までは業務で自分の顔写真を出すということがなかったので、照れ臭かったんですけど、新鮮でした。
「より多くの人に」「誰にでも」ヤフーのスタンスは公務員の仕事に似ている
ーー 山口県庁に戻ったら、どんな業務をされるのですか?
永岡さん:
「デジタル・ガバメント推進課」と聞いています。県内の市区町村のDXや、県庁内のグループウエア、インフォメーションの改修などがメインです。
DXにすこしでも貢献できたらと思っています。業務改善や効率化で、みんなが一緒に楽しく仕事できるような環境が作れればと思っています。自治体はどこでも人員削減が進んでいて、業務量が増えているのが課題です。これまでの経験を生かして、よりよい方法を模索できればと考えています。
ーー なぜDXをやらなくてはならないか、空気づくりも課題と聞きました
永岡さん:
そうですね。正直、DXが進まなくても今やれちゃっていますから、優先順位が少し下がってしまうこともあると思います。ただ単にやることが増えてしまっては、職員への負担も大きくなります。もちろん業務改善は良いことですが、導入も運用も、コストが軽いものではないと思います。
ーー 今後も定期的に連絡をとりましょう! 「永岡さんがみんなを説得してまわって何かをやり遂げた話」とかを、是非聞きたいです。
永岡さん:
コンタクトは是非とりたいです! もともと山口県がヤフーに出向させたのは、デジタル人材育成という目的と、山口に戻ってからもヤフーの人たちと繋がりを持ちながら業務を進めてほしいということだったんです。
LODGEのYouTubeチャンネルも登録してるので、これからもLODGEの活動を楽しみにしています。
ヤフー社員と話していると、新鮮で面白かったです。会話やミーティングのなかで、目指しているところ、スケールが大きいなと感じることが多々ありました。「どうやったら人々の生活が豊かになるのか」「どうやったら便利になるのか」「データでどう変わっていくのか」「日本をアップデートできるか」「より多くの人を、日本全体をよくしよう」……そういう話が会議で飛び交っていて、聞いていてやる気も出ました。
「より多くの人の生活を便利に」「誰にでも」というヤフーのスタンスは、公務員の仕事と似ているところがあるかもしれません。
少しでも、ここで学んだことやエッセンスを、持ち帰った先で生かせるようにしたいと思っています!
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