食思考マラソン(28)飲酒について(ノンアルコールビール その2)|太田充胤
ノンアルコールビールの常飲という、飲酒しない人からみれば二重に不可解と考えられる習慣についての話の続きです。
多くの酒飲みにとって、ノンアルコールビールは仕方なく選択される代替物であろうと思われます。飲みたいがさまざまな事情で飲めないときに、ビールの代わりに飲むもの。味覚を通じて脳を騙し、あたかもアルコールを摂取しているかのような気分で飲むもの。宴会でノンアルコールビールを飲んでいると、アルコールも入っていないのに酩酊感を覚えるというのはよく聞く話です。
しかしながら、私や妻が求めていたのはどうやらそういうものではなかったらしいということが、しばらくノンアルコールビールを飲んでいるうちにわかってきました。ノンアルコールビールなら酔わないぶん食後に作業がしやすかったりして、かえって普通のビールよりも優れているような気さえしはじめています。飲酒習慣をもたない人からすれば、もはや「ビール/飲酒の体裁をとる必要がどこにあるのか?」という感じだと思いますが、間違いなくどこかになんらかの必要性があるのです。
いろいろありそうですが、いま言語化できる範囲で一つ挙げるならば、「食事にあう炭酸飲料」という側面です。
食事内容にたいして自然に湧き上がり二人の間で共有される「ビール飲むよね?」という感覚は、本質的には「酔いたいよね?」ということではなく、「この食事内容だったら、それを受け止めるなにかが欲しいよね?」ということなのです。そして実際には多くの場合、この目的を達成するために酩酊それ自体は必須ではないのです。
「アテとはなにか」という件の問いをもう一歩前に進めるには、むしろこの視点から考えたほうがいいのではないかと、最近は思うようになりました。
アテと飲酒の関係は、その両者の結びつきにおいてどちらが先行して用意されているのかによって、大まかに2つに分けられます。つまり、(1)飲酒に対してアテが用意される場合と、(2)アテを受け止めるものとして飲酒があるという場合です。
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