読書ノート6
2021.11.29
『モオツアルト』小林英雄全集第八巻より(S13新潮社)
・「天才とは努力しうる才だ、というゲエテの有名な言葉はほとんど理解されていない。努力は凡才でもするからである。(中略)天才はむしろ努力を発明する。凡才が容易を見る處(ところ)に、何故、天才は難問を見るということが屡々(しばしば)起こるのか。詮ずるところ、弱い精神は、容易なことを嫌ふからだということになろう。自由な創造、ただそんな風に見えるだけだ。」
・「~抵抗物のないところに創造という行為はない。」
創造性と努力
・天才論を怠惰の根拠にしたくなる私の弱い心に喝を入れてくれた本文。この文に限ることではないが小林秀雄の文章には妙に歯切れの良さがある。論理の整然としていること洞察の明晰さがうかがえる。
・モーツアルトの芸術の到達点を再評価している。
彼自身が自身の才能に自覚的になったうえで自分がいい音楽を振りまき続けることへの思いや意識が紐解ける。無論、モーツアルトの音楽そのものを聴かないでどうしよう!私はレクイエムを聞きながら、小林秀雄の文芸と何度も重なり合って音楽を楽しんだ。読む耳の肥料(?)
私の胸の内には音楽という空間が無限に広がっていった。人生のうちでも多くは経験しがたい喜びだった。
余談だがモーツアルトの伝記的映画『アマデウス』のDVDを買って1年ぶりくらいに見返した。映画の中でも最も愛してやまない作品のうちの一つである。