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~対談編~GPSデータで1,419橋の交通量と迂回経路を調査【位置情報データの活用:広島県東広島市】


『GPSデータで1,419橋の交通量と迂回経路を調査【位置情報データの活用:広島県東広島市】』の記事では「モバイルGPSデータを活用した橋梁の維持管理方針の検討」に関する橋梁分析についてご紹介をしました。

今回はその第2弾として、東広島市の担当者と分析を担当したLocationMindのメンバーとの対談を通して、生の声をお届けいたします!

▼まだ読んでない方はぜひ前の記事をご覧ください!▼



メンバープロフィール紹介

東広島市建設部 彌勒さん
普段は建設系の技術職員としてインフラ管理の
計画策定などの業務を担当している
高知が大好き
LocationMind 金杉さん
今回の分析の全体統括
和菓子が好き
LocationMind 西村さん
課題解決に奔走するコンサルタント
サッカー大好きマン

対談スタート

分析過程や結果の満足度は?

西村さん:LocationMindが広島県主催のアクセラレータープログラムに応募してからお付き合いが始まり、市が保有する1,419橋全ての橋の分析が終わりましたが、今回の分析内容や進め方についてご満足いただけたでしょうか?

彌勒さん:はい、結果的に満足しています。
もし今回の橋梁の集約・撤去の検討を人流データを使用しないでしようとすると、数十倍、数百倍の時間がかかってしまったのだろうと思います。
そのような意味では、現時点で1,419橋全ての橋梁のデータによる調査が完了したという状況は、将来的にも役に立つ情報が入手できたと思いますし、人流データでこういうことができるようになるのか、という発見もあったのは大きいと思います。満足したかという点では、もう十分な成果物をいただいたな、という感じです。

過程についても、とくに不満に思う部分はなく、ウェブの会議も短時間で定期的にあったので、スムーズに話を進められていたと思います。


データ活用における今後の改善ポイント

西村さん:結果に関しては、ミーティングでも集約・撤去が決まっている橋が既にあったと思いますが、今回の取り組みで、新たに候補に挙がった橋はありますか?ここはもう少し頑張れたな、という点はありますか?

彌勒さん:分析結果の全てをまだチェックした訳ではありませんが、東広島市が集約・撤去の余地があるかなと考えていたいくつかの橋が、分析結果の上位2割の良い位置にいたので、現地調査をしながらもう少し細かく結果をチェックしていきたいと思います。
もう少し頑張れたなと思う点は、今回はあまりお金をかけていないという背景も起因していますが、近接し過ぎている橋梁については、うまくいかなかった点もあったというところですね。

西村さん:今後の改善点としては、より取得頻度の高いモバイルGPSデータを使用したり、自動車やトラックのプローブデータを使用するなどの改善余地はあると考えています。
分析を行うなかで迂回経路の計算方法や使用する道路リンクの選別など試行錯誤が発生しましたね。

金杉さん:橋梁の緯度経度自体にもズレがあるケースもありましたね。

彌勒さん:そうなんですよね。橋梁の緯度経度については、今年度に入ってから橋梁の長寿命化計画を改定するような業務があり、作業を進めるなかで、「管理している橋梁データの実際の緯度経度は正しいか?」という疑問が上がりました。GISの地図情報データは保有しているので、全ての橋梁の位置を、一橋ずつ地図や航空写真と比較して検証し、データと距離が離れている橋をピックアップしてみました。その結果、10~20橋ぐらいは緯度経度がかなり離れているものがあると判明しました。その中には完全に緯度経度の数値が異なるものもありました。その点では、位置情報データを活用して何か施策を立てようと思ったら、自治体側も正しいデータを持っておかなければならない、ということが反省点でした。

西村さん:今回は市から緯度経度情報を提供していただいたので、分析作業をスムーズに行うことができました。例えば、不動産の分析をしようとすると、緯度経度情報ではなく住所のみの情報で分析することもあります。住所には表記ゆれがあるケースも多いため、表記ゆれの修正や、重複データを統合するなどのデータクレンジング作業に手間を取られてしまうということもあります。

彌勒さん:今回の一連の作業の中で、一番手間がかかったところはどの部分ですか?
例えば、オープンストリートマップ(OSM)に橋梁の緯度経度データを紐づけて、その位置がずれた場合に再び正確に紐づける作業や、橋梁が存在しない場合の迂回経路のシミュレーションなど、様々なプロセスがあったと思います。その中で、特に修正や手直しが大変だったのはどのような部分だったでしょうか?

金杉さん:道路の幅員情報を市から提供いただいた道路網図から取得しようと試みた点は、けっこうな工数がかかりました。網図の形状にクセがあり、道路の交差状況が道路を飛び越えるような概念的な描写になっているため、OSMとの紐づけに苦労し、試行錯誤を重ねました。そこが難しかったところでしょうか。

彌勒さん:網図の整備は確かに課題なんですよね。

金杉さん:道路のデータといっても、何を最も正しいとするのかは、今回の件に関わらず、位置情報データ分析の共通する課題にもなっています。

彌勒さん:そうですね。東広島市としても、後に分析しやすく、正確に更新され続けるデータの蓄積という点は課題だと考えています。

例えば、道路や橋梁一覧のようなデータは、データ整備の基準や基本となるフォーマットなどはないんですか?

金杉さん:データ整理については、地域によってデータ定義の差異があったり、継続的なメンテナンスがされていないケースが多くあるため、分析を行う前に、その点を見極める作業が必要になってしまいます。

彌勒さん:網図などを整備し始めた頃は、このような分析がされることは想定されていなかったでしょうし、更新の重要性も今まで以上に高まっているように感じます。

金杉さん:ぜひ彌勒さんには自治体内のデータ整備を推進するような役割を担ってほしいと思っています(笑)

彌勒さん:頑張りたいと思います(笑)。実際、今回の1,419橋の分析をもとに、集約・撤去の検討対象となりそうな橋がいくつもみつかっています。データを活用したインフラ管理の重要性を改めて実感しています。

西村さん:確かに、こうした取り組みが進めば、より多くの橋を適切に管理できそうですね。


今回の取り組みを広めるには

西村さん:今回の取り組みは、他の広島県の自治体には伝わっているのでしょうか?今後、今回の取り組みを周知・拡大させていく方法を考えていきたいです。

彌勒さん:他の自治体の建設系の部署は東広島市が今回の取り組みをしたことをほぼ知らないと思いますね。
僕自身も他の自治体の取り組みについてそれほど知らないですね。
とある仕事で隣の市の道路管理系の方とお会いした際に、今回の橋梁分析の取り組みをしていることを話したら、「いいですねぇ!」という反応をいただきました。取り組み自体は知られてはいないですが、需要はかなりあると思います。

金杉さん:そのような反応をいただけたのであれば、この取り組みを他の自治体にもつなげていきたいですね。

彌勒さん:そうですね。そのお話した方も、先進的な取り組みに積極的に興味を持つ方だったので、東広島市のような取り組みを、スタートアップ事業で道路を対象として挑戦してみたいとおっしゃっていました。このような案件はどの自治体でも関心が高いものだと思います。

彌勒さん:たとえば国土交通省の「道路橋の集約・撤去事例集」がありますが、その中にけっこう色々ヒントがあると思います。事例の中にはかなりシステマティックに実施されたという自治体もあります。地図データや人流データなどをどう活用されたのかまではわかりませんが、それぞれみんな何かやろうとしている感じはあります。なので、事例集の中からどこの自治体がどういう動きをしているのか、それを押し進めようとしている国交省の部署はどうか、など、そのあたりがターゲットになる可能性が高いのではないかと思いますね。
インフラ長寿命化計画の中に、橋梁の集約撤去について具体的に記載しようという話になっていますが、多くの自治体が「どのような方法を取るべきか」と悩んでいるのが現状だと思います。

金杉さん:今回の分析を通じて、考慮すべき観点もいくつか見えてきました。ただ、災害時の影響まで今回考慮できていません。今後は、ハザードマップの活用や周辺施設の有無による影響、さらには一軒家が取り残されないかどうかを確認するための建物データの活用など、検討すべきポイントはまだ多くありますね。これらを整理しながら、より実効性のある計画づくりを進めていきたいですね。



対談を終えて・・・

今回の対談を通じて、橋梁の長寿命化や維持管理における課題が、データ活用の可能性が改めて見えてきました。自治体ごとに状況は異なりますが、データを活用することで、より実効性のある計画を立てることが可能になります。

今回の分析過程で浮かび上がったデータの精度や活用方法の課題も含め、より多角的な視点から検討を深めていくことが重要です。

私たちは、位置情報データの活用ノウハウを自治体の皆さまと共有しながら、未来につながる持続可能なインフラ管理を一緒に実現していきたいと考えています。ぜひお気軽にご相談ください!

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【担当】西村