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Saturday Morning マニラ、札幌、国分寺、浅草

朝はできるだけ早く起きる。休日は特に。何もしない時間をつくるために。

曇り空を背景に、蜂が飛んでいる。雑草の花に立ち寄って、そうしてどこかに出かけていく。弱い太陽の光の下で、ゴミ収集の車の発する音楽が遠く小さく鳴っている。



ドアを開けて、ベランダに出る。太陽を見て、街の音を聞く。

日の出から三十分。空気は水色。

車も、バイクも休んでいて、音もなく渡し船が川を横切って行く。

さらに三十分、柔らかいオレンジが水色の靄を消していく。

どこかで鶏が鳴いている。クラクションの音が増えていく。

次第に街は黄色くなり、太陽は直視できない程元気になる。

モーターボートが上流から走ってくる。

気がつけば世界は白くなり、街は目を覚ましている。

この街はきちんと眠る。巨大な広告塔はエナジードリンクや、ハンバーガーショップを宣伝し続けている。しかし、これも夜は寝る。(こいつは六時に起きる)

ここは常夏の島、フィリピンである。マニラはそのフィリピンの首都である。

Blur

気温が上がり始めたので、部屋に入ってエアコンをつけ、小さい音で音楽を流す。シャワーを浴びて洗濯をする。散歩をして帰ってきてこれの続きを書く。

沖縄の朝焼け

札幌に住んでいたころ、冬の朝はよくコインランドリーに行った。狭い部屋に洗濯物を干す場所はほとんどなかった。休日にはシーツやバスタオルも洗濯して、重くなったそれらをゴミ袋に詰めて、手袋とマフラーとコートを着て、雪の道をランドリーへと歩いた。昨晩もかなり冷え込んだのだろう。道は凍っている。滑らないよう用心深く、だが寒いから足早に。尖った透明な空気をマフラーごしに吸い込む。

ランドリーの中は暖かい。洗剤の匂いがする。洗濯機の回る音以外は何も聞こえない。雪が音を吸うのだろうか、冬の朝は静かだ。洗濯と乾燥は600円。乾燥だけなら300円。乾燥を待つ三十分間、少し本を読む。飽きたら回る洗濯物を眺める。それにも飽きたら外に出て煙草を吸う。

灰皿

国分寺に住んでいたころはランニングが朝の日課であった。近くに大学があり、春休みとコロナで人のいなくなったその構内をよく走った。その年の花粉症は幾分軽かった。いつもどこでもマスクをしていたおかげかと思う。大学裏の坂道を下り、川にぶつかったら左に折れて、歩道橋を上って下り、ホームセンター横の踏切を超えてまっすぐ、駅前通りに出る。その通りをしばらく進んでカーブするあたりにパン屋があった。ポケットの小銭でいくつか買って、家まではクールダウンとする。ちょうど汗が冷え始める前に家に着く。熱いシャワーを浴びてコーヒーを淹れて、連れと朝食にパンを食べる。ベーコンエピがとても美味しかった。曇り空を背景に、蜂が飛んでいる。雑草の花に立ち寄って、そうしてどこかに出かけていく。弱い太陽の光の下で、ゴミ収集の車の発する音楽が遠く小さく鳴っている。

国分寺の鰯雲

マニラへと発つ日、浅草は秋の終わり、冬の入り口の日曜日だった。前の日は友人宅で、酒を飲みすぎていた。遅く、もう朝とは言えない時刻に起きて荷物を鞄に急いで詰めて、昼前の平らな光の下を散歩した。寒い日が続いたあとでふっとやってきた暖かい日であった。隅田川に向けて歩き始めたが、あまり時間に余裕がないことに気がついて交差点を左に折れた。小学校の横の小さな公園、ブランコの椅子は小さすぎて座れなかった。遊具には男たちが車座になってラジオで競馬の実況を聞いていた。連れは眩しそうに白い太陽を見上げて、私は鳩とピンクの椿と、何だかわからない黄色い花を見ていた。風はなく、空気は軽く味もなく、空に雲はなかった。ぼんやりとした頭でそれらを眺めた後、車に揺られて、飛行機に乗り換えて、タクシーに乗ってここまでやって来たのだ。

今日も朝の時間はすぎて、規則正しく腹が減っている。朝食を食べたら街に出る。

浅草 冬の朝



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