小説家の連載「プリンセスヴァイオレットの冒険」第六話

〈前回のあらすじ:ヴァイオレット王女は母エリー王妃の故郷である本の王国に滞在し、母方の祖父母である国王夫妻と共に時間を過ごす。叔母マリー王女が旅に加わり、魔法のエメラルドを求めてドラゴンの王国へ!〉

 マリー王女が加わった旅は、それまでのものとは全然違いました。
 ヴァイオレットとレイだけの時は、何か困った事があっても、全部自分達で解決しなければなりません。でも叔母様が一緒なので、大人が一緒に旅をしてくれるのは、ありがたい事でした。
 叔母様は魔法が使えるので、魔法のほうきを持ってきてまたがっています。レイはドラゴンに変身して、ヴァイオレットを乗せました。
「叔母様、ずっとほうきで飛んでいてしんどくないの?」
 ヴァイオレットは叔母を心配して、聞きました。マリー王女は、何時間空を飛んでいても、平気そうにしています。
「レイも心配にゃ!もし疲れたら、ヴァイオレットと一緒にレイの背中に乗るといいにゃ!」
 レイもそう言いました。
 マリー王女はにっこり笑って答えます。
「二人共ありがとう。いつも慣れてるから大丈夫よ。でもちょっと疲れてきたわね。ちょっと休憩しましょうか」
 マリー王女は下をきょろきょろして、
「あのカフェで休憩しましょう。何回か行った事があるわ」
 みんなは空を飛ぶのをやめて、下に降りて、少し歩きました。
 森の中に、小さなカフェがあります。
 魔女のとんがり帽のように、とんがった三角の屋根がついているカフェです。そこは、マリー王女のお友達がやっているカフェでした。
 木のドアを開けると、屋根とそっくりの黒いとんがり帽子をかぶった、茶色いボブヘアの女の人がエプロンをつけてお皿を洗っています。
「いらっしゃいませ!あら、マリーじゃない!」
 マリー王女を見てびっくりしています。
「どうしたの?そちらの女の子は?」
「こんにちは、ジェニー。ヴァイオレット、私の友達のジェニーよ。彼女は本物の魔女なの。プリンセスじゃないけど、料理が上手でね。ここのカフェのメニューは絶品よ。ジェニー、この子は私の姪っ子。姉夫婦の一人娘よ。ヴァイオレット、ごあいさつなさい」
「はじめまして、ヴァイオレット王女です」
 そう説明すると、ジェニーはびっくり!
「まあ、じゃあマリーと同じでプリンセスって事じゃない!はじめましてヴァイオレット!」
 ジェニーはにっこり笑って言います。
「レイも忘れないでにゃ!レイは魔法が使える猫にゃ!」
「あらあら、賢い猫ちゃんね!かわいいわ」
 ジェニーがレイを抱き上げると、レイは満足そうにのどをごろごろと鳴らしました。
「ジェニー、私達疲れていて、お腹が空いているの。何か作ってくれる?」
「ええ、もちろんよ。ちょっと待っててね」
 魔女のジェニーはすぐに美味しいものを作ってくれました。
 レイには温かいミルクを、ヴァイオレットにはパンケーキとオレンジジュース、マリー叔母様にはブラックコーヒーとサンドイッチのセットを出してくれました。
「あったかくて美味しいミルクにゃ!」
 レイはご機嫌にミルクをなめています。
「これ美味しいわ!」
 ヴァイオレットも喜びます。
「うちの店はとても人気なのよ。魔女も魔法使いも、普通の人間も来るし、天使や悪魔も来るわ。うちの店にいる時だけは、悪魔も大人しいのよ」
 とジェニーは言いました。
「それにしてもどうして三人そろって、旅をする格好なの?」
「それはね・・・」
 と、マリーとヴァイオレットが説明すると、ジェニーは難しい顔になりました。
「ドラゴンの王国は、とても危険よ。子供が行くところじゃないわ」
「でも、お父様とお母様を救うために行かなくちゃいけないの!」
 ヴァイオレットは叫びます。
「わたしはヴァイオレット王女!いずれ女王になるの。お父様とお母様を救えるのは、わたししかいません」
「そうにゃ!そして、レイがヴァイオレットの親友にゃ!」
 ジェニーは少し黙った後、教えてくれました。
「ドラゴンは、音楽が好きなのよ。もしかしたら、音楽を聞かせたらどうにかなるかも」

 お腹いっぱいになった三人は、ドラゴンの王国へ向かいます。
「ドラゴンの王国は本当に危険なのよ。気をつけないとね」
「はい、叔母様」
 そんな話をしていると、ドラゴンの王国へ着きました。
 ドラゴンの王国に着くと、大きな岩でできた門が、国を守っています。
 三人は空を飛んで門を超えました。
 すると、大きな二匹のドラゴンが飛んでやってきました。
「何者だ!勝手に王国に入る事は許さん!」
「そうだそうだ!」
 マリー王女が魔法で姪っ子と猫を守ろうとした時、ヴァイオレットは大声で叫びました。
「私はヴァイオレット王女です!お父様とお母様を病から救うために、魔法のエメラルドが必要なんです!どうか力を貸してください!」
「何だと?!」
 ヴァイオレットの話を聞いた一匹のドラゴンは、少し考え込んだ後、
「王女と言う事なら、よかろう。我が国の国王陛下に会わせよう。ついてきなさい」
 と三人に向かって言いました。
 果たして魔法のエメラルドは手に入るのでしょうか?!
                             次回に続く


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