『安全』と『安心』は異なる概念、そして『愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ』。
『安全』と『安心』は異なる概念です。
言い古された話ですので、一般に広く浸透していると思っていましたが、どうもそうとは言えないようで、少なからず驚きを隠せずにいます。
意図的かどうかはわかりませんが、新型コロナウイルス感染症への対応を見ていると、政府の施策も、さまざまな専門家の発言も、そしてマスコミの報道も、この異なる概念を混同しています。なんとも不思議なことです。
しかも議論をするのではなく、お互いに避難し合っているようにしか見えません。悲しいことです。
もう一つ、気になることがあります。
専門家のお一人が、しきりに「今年3月、4月頃の経験から学んだところによると…」という趣旨の発言を繰り返しておられました。この発言を聞くと思い出すのが、初代ドイツ帝国宰相オットー・フォン・ビスマルクの『愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ』という言葉です。
歴史に刻まれた感染症との戦いや、海外における新型コロナウイルス感染症対策に学ぶのではなく、歴史的評価も世界各国からの評価もまだ定まっていない自分たちが対峙した唯一の経験を範とすることの危うさに、心細さが募ります。
『安心』と『安全』、「感染拡大防止のための検査」と「経済を回すための検査」。「日本国内の過去の経験」と「歴史に刻まれた経験」や「多様な世界各国での事例」。
すべての方々が『笑顔で安心して過ごせる世の中』となるために、叡智を結集したいですね。