作品を完成させるために最も適した画材が「消化器」であることに気づいたのは、他人から見ると異常のように思えただろうけれど、僕にとっては必然だった。新宿のドンキホーテを新兵みたいに鼻息荒く行進していた僕は、エスカレータを登り切ってすぐ横に鎮座していたギラつく赤いその容器を「これだ!」と心の中で歓喜し敬礼したのち、ものの一秒で買い物カゴへ投入した。言うまでもなく、不慮の火災に備えるためではない。自己表現のためである。 「消化器アート」ならぬ「消化器事件」は、美術大学に入学して