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「コイントス」【ショートショート/140字小説のリライト】

 冒険者は、魔物に襲われた村を救った際に共闘した戦士と旅をともにすることにした。強力な攻撃力を誇る頼もしい男だ。
 戦士にはある癖があった。物事を決めるとき、なんでもコイントスで決めるのだ。一緒に旅に出るかどうかも、最終的にはコインで決めていた。
 旅の途中、冒険者たちは分かれ道に出た。
「よし。コインで決めよう。表が出れば右へ。裏なら左へ」親指ではじいたコインが宙を舞う。落下してきたコインを手の甲で受ける。「裏。左の道だ」
 次の村がなかなか見えてこない。冒険者は戦士に提案する。「ここらで少し休もう。腹ペコだ」
「よし。わかった。それじゃあ、腹ペコかどうかコインで決めよう。表なら空腹。裏ならまだ食べなくてもいい」
「いや、俺の腹具合、コインに決めさせんな。腹減ってるって」


※かつてのTwitterで投稿していた140字小説。140字以内はけっこう難しく、なくなくカットした箇所もかなり……。字数を気にせずにリライトした過去作をnoteにあげていってます。

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