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「馬鹿は風邪ひかない」【ショートショート/140字小説のリライト】
営業先から会社に戻ろうと移動していると、病院から連絡があった。兄が処置中だという。
足が震えた。呼吸が乱れる。兄の身にいったい何が——。小さな頃からひょうきんで、「馬鹿は風邪ひかない」と皆にからかわれていたあの兄が。
タクシーを捕まえ、病院へ。得も言われぬ不安と戦いながら、後部座席で小さくなっていた。
この辺りではもっとも大きい総合病院。
殺風景な廊下を曲がり、処置室の前へ。ちょうど医師と鉢合わせした。
「兄は……兄は、無事なのでしょうか……?」
医師は唇を真一文字に結び、困惑の表情を浮かべる。
「どうやら、体内に異物が混入したようで……」
「……異物? 何がどこに……」
ひょっとして手術? 病状はどうなんだ?
医師がため息をつく。
「……目にまつ毛が入って痛いと大騒ぎしています」
※かつてのTwitterで投稿していた140字小説。140字以内はけっこう難しく、なくなくカットした箇所もかなり……。字数を気にせずにリライトした過去作をnoteにあげていってます。