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『冬期限定ボンボンショコラ事件』

本作品は、米澤穂信のミステリ小説「小市民シリーズ」の最新作で、「春夏秋冬」の冬にあたる節目の作品でもある。本シリーズは、小鳩常悟朗と小佐内ゆきの2人の高校生が互恵関係を結び、小市民を目指すという内容である。

読んですぐに違和感に気づく。
通常、小市民たるもの、わざわざ小市民を目指さない。畢竟、彼らは普通ではないのである。

小鳩は「解きたがり」。本人は自身の推理力の高さ自覚しており、それを人に堅持したくてたまらない。小佐内はスイーツが好きな可愛らしい女子である。というのは表面であって、裏面には「復讐」好きという恐ろしい本性がある。
この本性によって痛い目を見た2人が、互いを利用しあって小市民を目指す。この2人が織りなす物語が絶品なのだ。

渋皮栗さんの挿画は味があってお気に入り

シリーズ1作目では高校1年生だった小鳩も、本作品では大学受験を目前に控えた高校3年生になっている。ある冬の下校途中、小鳩は轢き逃げにあい、入院することになる。病室で目が覚めると、枕元には小佐内の「犯人をゆるさない」のメモがある。一体、轢き逃げ犯は誰なのか。
作中では、彼らが小市民を目指し、互恵関係を結ぶきっかけとなった3年前の事件にもフォーカスが当たっている。

3年前の事件の犯人をほぼ当てられたのは自慢したい。生粋の小市民だって推理ぐらいはできるぞ!と思ったが、張り合っている相手が中学生の頃の小鳩では、ただの大人げない人にしか見えないかもしれない。

購入者特典の特製しおり
「夏期限定」版を入手するため、
発売日に遥々くまざわ書店に買いに行った。

個人的に本シリーズの一番の絶品は、『夏期限定トロピカルパフェ事件』に収録されている「シャルロットだけは僕のもの」だ。主人公が犯人、ヒロインが探偵役の構図で、手に汗握る頭脳戦が繰り広げられる。

シリーズの特徴の1つに、全編通じて主人公の小鳩目線で描かれていることがある。ヒロインの小佐内は、小鳩というフィルターを通してしか描かれないため、内面がなかなか読み取れずミステリアスな存在となっている。この短編ではその魅力が存分に活かされていて、小佐内と相対する小鳩を通じてスリリングな展開を味わうことができる。

24年の7月からは『小市民シリーズ』としてアニメが放映される。
小佐内のビジュアルと黒い部分のギャップにやられる人が続出するのは間違いない。


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