バルセロナは観光向けの短期住宅賃貸を市内全域で禁止
case|事例
バルセロナは、賃貸住宅の家賃高騰や住宅不足は観光向けの短期賃貸に原因があるとして、市域全体で短期の住宅賃貸を禁止する。市長は、中産階級が市外に引っ越さなくて済むようにするためには住宅供給が必要で、時間をかけて解決する必要があると今回の決定に至った背景を説明している。
バルセロナは、今回の決定によって、新規の短期住宅賃貸のライセンス発行を停止すると共に、既存ライセンスの更新も行わない。そのため現在10,000件登録されている短期賃貸住宅は2029年には市内から完全になくなる。
バルセロナは世界で最も積極的に住宅問題に取り組んでいる都市のひとつであるが、観光向け短期住宅賃貸による住宅問題には世界中の都市が直面し、その対応もさまざまである。ニューヨークやバンクーバー、東京などはホストが実際に住んでいる住宅のみ短期賃貸を認めている。サンフランシスコやシアトルは1人のホストが登録できる物件数に上限を設けている。ダラスは特定のエリアを対象に短期住宅賃貸を禁止している。ロンドンやアムステルダム、パリをはじめとする多くの都市は年間に賃貸できる日数に制限をかけている。かつて、2016年にベルリンは短期住宅賃貸を市内全域で禁止したが、2018年にその制限を撤回し、制限を緩やかにし罰金を高額化することに方針転換している。
insight|知見
観光を持続可能に受け入れ、現地の生活とのバランスをとるために、世界の観光政策は、無制限の受け入れから適切なマネジメントへ、徐々にシフトしていっているようです。
バルセロナは、バス路線を地図アプリから消去するなどオーバーツーリズムの対策の先頭を走っています。今回の短期住宅賃貸の禁止も一連のオーバーツーリズム対策に連なるものと言えます。
今回の決定の背景にある中産階級の市外への流失の抑止は、結果的に市内の働き手の確保や経済・活力の維持、生活文化の維持などを目的にするものだと思います。
日本の観光産業がGDPに占める割合は2.0%で、スペインの7.3%よりも低い水準にあります。濡れ手に粟のように語られる観光ですが、数字やデータを見ながら付き合い方を再考する必要もあるかもしれません。