3Dデータがバリアフリー都市への道を開く
case | 事例
スイスのバーゼルで3Dデータを用いて、誰もが不自由なく移動できるインクルーシブな都市づくりに向けた試みが進んでいる。バーフュッサー広場(Barfüsserplatz)はバーゼル市の中心にある、トラム8路線が集まり、有名なバーが広場を取り囲み、年間を通じてマーケットやフェスティバルが開催され、スイスのサッカークラブFCバーゼルのイベントが開催されたりする広場である。ここは活気に満ちた広場である一方で、障害物も多い。段差、縁石、トラムのレール、石畳などは、足の不自由な人々にとってつまずきやすいかったり、乗り越えられない障害物になったりしている。
バーゼル市は、スイス北西部応用科学芸術大学(FHNW)とヘキサゴン社と共同で、バリアフリー都市作りのために必要な高解像度のデジタル都市モデルを作成するプロジェクト「DigitalCities4Us」を進めるにあたって、実証場所としてバーフュッサー広場を選んだ。スイスの障がい者平等法は2004年に施行され、バリアフリーの公共交通機関の整備など、障がいを持つ人々が社会活動に完全に参加し、自立した生活を送れるようにすることが定められている。一方で、地方自治体にとっては公共施設やインフラを継続的に調整し、最適化しているものの、真のインクルージョンを達成するためには、さらなる努力が必要な状況にある。DigitalCities4Usプロジェクトは、特定の場所の高解像度デジタルレプリカを作製することで、移動に不自由がある人への課題にどのように対処できるかを実証することを目的として実施している。
ヘキサゴン社は、基礎となるミリメートル単位の精密データの取得、処理、分析、視覚化のための実践的な経験、技術面のサポートを提供し、FHNWの学生やスタッフはヘキサゴンの専門家のサポートを受けながら、モバイルマッピングシステムやレーザースキャナーなどを駆使してバーフュッサー広場の高精度データを取得し、その結果広場のミリメートル精度の50億測定点からなる3次元レプリカが、データクラウドに作成された。この精度では、車椅子やベビーカーで石畳を通過するときの転がり抵抗や振動を予測するためにも使用できることから、移動に障害を持つ人々の移動についてシミュレーションしているところである。プロジェクトは2025年に完了する予定で、その後、バーゼル市当局と政策立案者は、プロジェクトの実行可能な提言に基づき、バーフュッサー広場を含むインクルーシブな都市を育成するために、社会的意義の高いインパクトのある施策を実施することが期待される。
insight | 知見
デジタルツインの記事はこれまでもよく目にしてきましたが、特定の場所をミリ単位で測定して精緻に再現するようなことも技術的に可能になってきたのだと驚きました。
このような精度を全市のデジタルツインへ展開することは考えていない(市全体のデジタルツインにはこのレベルの詳細さは必要ない)と記事に書かれています。中心市街地の特定箇所といった特に重要なところの解像度を高めるといった選択・集中の進め方は参考になると思います。