歩行者専用ゾーンを導入して変革を目指す都市
case | 事例
シカゴ市は歩行者専用ゾーンを増やす計画の実施に先立って、歩行者と自転車の利用状況に関するデータを収集するために、市街地の一部での週末の自動車乗り入れ禁止の実験を今年の年初から実施している。シカゴ市長は、環境の持続可能性を推進し、地域のビジネスを活性化させるという利点を強調し、都市空間を地域コミュニティにより良く役立つように変革させる必要性を訴えている。また、アイルランドのダブリン市は、ダブリン市都心交通計画により、バス、自転車、歩行者を優先し、特にピーク時間帯には車両のアクセスを厳しく制限する制度が8月25日より実行に移される。この制度は公共交通機関の効率化と渋滞緩和を目的として、交通量の6割が単に市内中心部を通過していることを背景に、午前7時から午後7時までの間、ダブリン都心を分断するリフィー川の北岸と南岸地区への自家用車の乗り入れを禁止することが含まれている。
一方、ニュージーランドのウェリントンでは、ゴールデンマイルプロジェクトによって、都心繁華街のコートニープレイスでの自家用車の利用を制限することを目指しているが、緊急車両の通行や配送の物流に関する地元の懸念に直面している。 住民の中には、この計画は変革をもたらすビジョンとは裏腹に、妨げになると感じている人もいるため、都市計画担当者は歩行者の快適な移動促進と、地域のビジネスや住民のニーズを両立させる微妙なバランスに直面している。また、カナダのバンフでは、毎年恒例のバンフ・アベニュー沿いの歩行者天国の今後を決定するための住民投票が8月12日に実施され、住民投票の結果、反対票が1,328票、賛成票が1,194票の僅差で歩行者天国が廃止された。交通渋滞や迂回運転ルートの負荷に対する懸念が、観光体験の向上や地域社会の関与を上回った。都市中心部における様々な市民感情を反映した結果だと言える。
世界中の都市が持続可能性と公共空間の改善に重点を置き、都市生活を変革するために歩行者専用区域を導入する傾向が強まっている。これらの取り組みは、地域の企業や住民からの反対や課題があるにもかかわらず、車両交通量を減らし、公共交通機関を強化し、住民や訪問者にとってより魅力的な環境を作り出すことを目的としているものである。
insight | 知見
ダブリンの規制は計画発表時に当コラムでも取り上げましたが、今月から施行されるようです。それ以外の都市の取り組みは知りませんでしたが、都心の自動車交通の制限とウォーカブルな環境づくりは大きなトレンドだと言えそうです。
上の記事や先日のポートランドの記事にあったように都心の歩行者専用空間づくりには様々な懸念や反対の声が存在します。住民投票をするにしろ個別対話をするにしろ、都市の行政としては環境対応、安全確保、にぎわい創出の各面で、都心の自動車交通を抑制するのが基本的な方向だと思いますので、歩行者専用空間の利点に関するエビデンスを集めて利害関係者の理解を得ることが重要だと思います。