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普段のあたりまえを特別な体験に
「子供のころお庭で過ごした思い出はありますか?」
そんな問いかけを友人たちにしてみると、面白い話が聞けた。
たとえば、
・芝生が敷いてあったお庭で缶詰の空き缶を埋めてゴルフ遊びをした。
・庭の土を丸めて磨いてお団子を作った。
・蟻の行列をじっと眺めていた。
・イチジクの木にカミキリムシがよく来ていてそれを捕まえていた。
・木登りをした。
・お庭にテントを張ってそこでお兄ちゃんと一泊キャンプをした!
なんて話も。人それぞれにお庭で過ごした記憶が出てきて面白い。
僕自身も小学生のころ。
誕生日に、友達を呼んで家の小さな庭でバーベキューバースデーを開催した記憶が鮮明に残っている。
父親が現場でもらってきたU字溝を逆さまにして炭をおこしその上に網を載せた無骨なバーベキューコンロ。その上でお肉や野菜を焼いて友達みんなでワイワイ食べながらジュースで乾杯をした。普段仕事で朝早くから仕事をして休みもあまりなくて、どこか特別なところに連れて行って遊んでもらった記憶はないけれど、このバーベキューバースデーの記憶はとても鮮明に残っている。あの日のお肉はいつもよりも大きめに切ってあったし、皮手袋をはめてトングを握っていた父親の横顔はかっこよかった。母親もいつもテンション高かったけれどこの日は特に上機嫌だった気がする。
誕生日だから記憶に残っているというよりは、家の外で、小さな庭でみんな一緒にご飯を食べたといういつもとは違う特別な一日だったことが大きいのだと思う。
普段の暮らしの中心は家の中での出来事が多いのだけれど、一番身近な外の世界である庭は日常の一番近くにある非日常な暮らしのような気がする。
ご飯を食べる、寝る、遊ぶということが外の世界に出たとたん普段とは違う非日常になる。これは面白い。
お庭のスペースとなる建物が建たない場所はどうも生活と切り離されて考えられがちだけど、とりたててお金をかけてかっこよくきれいに整えなくても実は自分たちが楽しいお庭、日常があっというまに非日常に変化する場が創れると思う。
家の中では感じることができない自分たちの楽しみを糸口に自分たちの生活のスパイスになるようなお庭をイメージしてみてはどうでしょうか?
*「にらめっこ」 2012年 5月6月号 掲載 に加筆修正