『十牛図のワーク・第六図』& 冬至の瞑想|裏の畑Body work部
月に一度のシュタイナーの絵の教室「裏の畑」。わたしは後半のBody work部で『十牛図のワーク』を担当しています。前半の美術部の様子はこちら↓
12月20日。
明後日に冬至を控え、刻一刻の深い闇の中へと沈潜していくのを感じられる時でした。この日は、まず冬至のお話から。
一年で最も陰のエネルギーが強まる冬至の日は、「陰陽転化」という現象が起こると考えられています。陰のエネルギーが極まると対極にある陽のエネルギーが強く働いて、ぐいっと陽のエネルギーの方へ大きく方向転換するのです。最も深い闇の中で、最も輝く自分の部分を見つける。それが冬至です。シュタイナーの言葉を借りれば、「真夜中に輝く太陽」とも言えるでしょう。
冬至を祝う儀式は、現代ではクリスマスというキリスト教の祭典と一緒になって世界中に広まりました。そして、いつを初日とするかは諸説ありますが、クリスマスから始まる12日間を聖十二夜といいます。
この期間は太陽や月の力がいつもより弱り、その代わり太陽系の外に意識が向かいやすいと秘境的に言われています。よって、来年の一年を予知するような出来事があったり、いつもとは違うインスピレーションとつながりやすい、特別な期間として古くからさまざまな各地でリチュアルな時間がもたれてきました。
この日はそんなお話をしました。
さて、この日は十牛図第六図とも絡めてワークを作ったのですが、まさに、冬至のニュアンスが第六図とすごくリンクするところがあってとてもやりやすかった。
第六図は、これまで探し求め、そして戦いを通じて和解した牛の背に乗って「家」に向かって歩いていく、という図です。その家というのは牧人が本当に探し求めていた夢。ビジョンの世界です。
ふむふむ。じゃあ、その家という場所にたどり着けば夢が叶うんだろう、幸せになれるんだろう。とついつい考えてしまいますが、この禅画はそんなにシンプルなものではありません。よく見ると、牧人と牛はお互いに違う方向を向いているのがわかります。
牛は家がどちらにあるのかを知っています。しかし、その間に何をしたら良いのかはわかりません。そのプロセスでの「思考や社会性」は牧人に委ねているのです。また、反対に牧人は家がどちらにあるのかを知りません。しかし、全く未知な方向へ牛が進んでいくのに足を委ねながらも、その時々で社会に対して何をしたら良いのかを考えることができます。
牛の背に乗り、足元を委ねながら、そのプロセスの中でさまざまなことに気が付き、自分を取り戻していき、動きながら変容していく。それが第六図だとわたしは理解しています。
ちなみにわたしはこの第六図を「日日是好日モード」と呼んでいます。
このプロセスでは、何かを意識的に「続けること」でとても大切です。イチローのマウンドに上がった時のバットの構え、羽生結弦のスケーティング前の祈るようなポーズ。これらは日々の練習の中で、気持ちが乗る時も、乗らない時も、調子がいい時も悪い時も、その日その時々で最高のパフォーマンスを生み出そうと励んできた彼らが生み出した習慣が、続けていくことによって一つの儀式として力を持っていったのではないかなと思います。
続けるということを通して、古い自我を少しずつ壊していき、もう一つ上の霊我に目覚めていく。松村潔氏の言葉を借りると「専門的悟り」の領域です。ちなみに、二十四節気やら、フランス滞在記やら、一日一描やら、ナンバリングだらけになったわたしのnoteはこの第六図をちゃんと歩もうということを意図しています。
ちょっと熱く語りすぎました・・。
最後は、前半に描いたフクロウの絵を手元に置いて、誘導瞑想です。
イメージの中でフクロウに誘導してもらいながら、冬至ということで一年をぐるり振り返っていきます。
どのプロセスも全て尊い。
そんな風にこの一年の出来事一つ一つに思いをはせていくと、内側で牧人と牛は一つになっていくのを感じます。古い太陽が死を迎え、それにより内側の光に気がつきながらも新しい太陽が生まれていく冬至の期間は、そんな牧人と牛との一体感や、これから辿り着く一体となった世界観(第七図)を感じやすい特別な、マジカルな期間なのではないでしょうか。
この日で2022年の裏の畑Body work部は最後。ここまで一緒に歩んできた一歩一歩に改めて感謝をこめて。
写真提供:ゆかりさん(ホームエデュケーション寺子屋てらこ主催)