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151. 整えて、去っていく

Bonsoir!🇫🇷 毎週金曜日更新のフランス滞在記をお届けします。
年内最後の配信である今号は、わたしが大切にしている「お引っ越しポリシー」ならぬ「人生のポリシー」についてのお話。




2020年5月某日。
捨てながら引っ越す、その名も「すてっこし」を合言葉に、新居に持ち込む物の厳選に厳選を重ね、荷物を運び出したわたしたち。とうとう古い家の中がほとんど空っぽ状態になった。荷物がなくなった部屋には隅々まで光と目が届く。すると、普段の生活の中で知らず知らずのうちについた汚れや、大きな家具の後ろに控えていたホコリなんかが堂々と顔を出す。

さて、ここからが最終ステージだ。

新居での生活はすでに始まっているのだが、まだ運んでいないものがあった。それは掃除道具一式。わたしには引っ越す時、かなり丁寧に掃除をする、癖というか習慣がある。

これは精神的なものかもしれないけれど、退去時に掃除をしていると、汚れとともに自分たちの暮らしの気配が消えていき、その代わり温かさだけが空間に残っていくような気がするのだ。賃貸の内覧をしていると、たまにそんな空気を感じる部屋に出会っていいなぁと思うことがある。

きっと、そういう部屋は大事に大事に使われてきたのだと思うのだ。
願わくば、わたしたちが去った空間にもそんな空気を残していきたい。

お友達が来るたびに賑やかになっていった「窓ガラスアート」もきれいにお掃除中。

物をどかしたりしなくても心置きなく掃除ができる。なんて気持ちが良いのだ。
あぁこれは、あの時の傷かな。ここはよく使った場所だな。そんなことを考えながらほうきでホコリを落とし、ぎゅっと絞った雑巾できれいに拭き上げていく。

雑巾についた汚れは水に流れてしまうけれど、その代わり楽しい思い出は心に吸収されていくような気がして、晴々しいような切ないような想いが心を染める。

さようなら。
里山の大好きなお家。

わたしにとっては、ここは妊娠・出産を経て3歳まで小さな子どもと共に過ごした大好きなお家。忘れたくても忘れられない。きっと、いつかこの世を去る時がきたら、一番に思い出すのはこの家のなかで過ごした甘い時間なのかもしれない。

ちゃんと出会って、ちゃんと別れる。
大事にしながら暮らし、整えて去っていく。

それがわたしの「お引っ越しポリシー」ならぬ、人生のポリシーなのだ。

きれいになった縁側でハイポーズ。



最後までお読みいただきありがとうございました。

2020年から書き続けてきたこのフランス滞在記も、いよいよ終わる時が見えてきました。

明後日で2023年が終わりますが、自分がこれまで書いてきた150話を読み返しながら、来年は「滞在記を書くこと」「フランスの生活」がわたしに何を教えてくれたのか?という大きな流れをふりかえっていきます。

一週お休みをいただいて、次回は2024年1月12日(金)に配信を再開します。
良かったらまた読んでくださいね。

それでは、どなた様も良いお年をお迎えくださいませ。
Bonne année!🇫🇷

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