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139. 家事ホリックという病の救い手は?

bonjour!🇫🇷 毎週金曜日に更新のフランス滞在記をお届けします。
あまり体調のすぐれないある日、キッチンで料理をしている夫の背中をぼーっと眺めていたら、起こったある出来事。今号はそのことについて当時書いた文章をふり返りながら、今に繋がる想いを感じてみます。



2020年4月某日。

ここのところ、好きだったキッチンがすごく遠くに感じます。
みんなびっくりするほど狭いうちのキッチンだけれど、家の中でわたしが一番好きな場所だった。
壁紙は全部引っ剥がして自分で貼り直して、キッチン用品も断捨離して、快適グッズも揃えて、同線も自分仕様に設計して、キッチンは、わたしにとって秘密基地みたいな場所だった。

そこで家族のためにご飯やオヤツを作るのが好きだった。
でも、ここのところ洗い物が億劫になって、夫の強いリクエストで食洗機が導入された。購入しつつも、無水鍋の方が好きで稼働率が低かったホットクックが本格稼働しはじめた。

キッチンが、わたしだけの場所でなく、家族の場所になった。
そうしたら、みるみる料理が面倒くさくなって、おまけに洗濯やら掃除など家事全体が超絶に面倒くさくなっていった。

ここ数日、ほんとうにやる気が起きなくて、ボケーッと過ごしていると、夫が夕食を作り始める。オヤツも作り始める。済んだ食器を前にボーッとしているとさっさと食洗機へと運ばれて、ガーっと洗われている。

朝ボサボサ頭のパジャマ姿で起きてきたら、パンケーキが焼けてて、コーヒーをドリップしている夫。

「何これ、わたし、死んだの?」と一瞬思った(笑)。

なんだかモゾモゾして挙動不審になりながら、夫と娘を見ると、なんだか楽しそう。もう一度、
「わたし、死んだの?」と思った。


勇気を出して(笑)、さっさと掃除をする夫を尻目に、布団でゴロゴロして(内面はザワザワ)ネットサーフィンなどを。
ウィズコロナ時代の経済戦略、的な記事を読むも入ってこず、ウサギの飼育の仕方なんぞに惹かれる。

「わたし、やっぱり死んだのかもしれない」
と三度。

やばい、終わっている。
さぁ、しっかり休んでリフレッシュしたんだ、家事育児だ!と意気込むも、布団とウサギの誘惑に勝てない。

諦めてゴロゴロに徹し、夫の様子を観察しながら気づいた。
「家事育児って、ものすごく大変なんだ」
そんなの世間一般的な常識で、ごくごく当たり前の事実なのだけれど、わたしはあの瞬間、ものすごい衝撃が走った。

育児なんてこなすことは当たり前で、さらに日々クオリティまで追求していた自分にちょっとした戦慄さえ覚えると共に、頑張ったなぁと、しみじみ思った。
家事育児の両立がすごく大変、と初めて気づくのに、3年かかりました。

ところてんのようにキッチンから押し出され、今は絵が描きたくなっています^^ 我が家で起こった、小さくて大きな転職活動でした^^

感慨深いなぁ。
これまでキッチンはわたしの「お母さん」アイデンティティの象徴のような存在だったと思います。それがフランス生活やコロナ禍を経て少しずつ変容していった。社会から押し付けられる母親像にずっとずっと抵抗してきたのだけれど、無意識的にそこにこだわってがんじがらめになっていたのはわたし自身だったのかもしれません。

当時のわたしはワーカホリックならぬ「家事ホリック」だったと思う。
もはや病レベルである。
そんな家事ホリック妻を見兼ねて、夫は食洗機を導入した。フランスで借りていたお部屋のキッチンには食洗機があってとても便利だったからだ。しかし、ビルトインと違い置き型食洗機はとても小さくその中に食器を並べることがストレスで最初は「え、いらなくない?」「お気に入りの食器は食洗機で洗えないじゃん」「デカくて邪魔」などなど・・ブーブー文句を言われながらもやってきた食洗機。

正直、そんなに食器を洗う負担が軽減したようには感じなかった。
しかし、食洗機があることで夫や家族が家事に参加しやすくなった。それによって、今まで妻の専業スペースだったキッチンが圧倒的に風通しの良い空間になった。一昔前の便利家電っていうのは専業主婦を助けるものだったのかもしれないけれど、現代の便利家電は家族全員をサポートするというお役目があるのかもしれない!と唸った。

そして、奇遇にも、家事ホリックなわたし(と家族)を救った食洗機を今、手放そうとしている。稼働していないので、普通の水切りカゴのようになっていて、「使わなくて良くなってきたね」という会話が夫との間で増えてきたからだ。


ありがとう食洗機。


そして、あの頃のわたしに伝えたい。


わたし、今、絵を描いてるよ。
現実はあなたが思うよりずっと優しいよ。
ウサギの動画みながら、もっとゴロゴロしていていいよ。

って。

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