125. 3歳児からコロナウィルスはどう見えていたのか?|Stay Home編⑩
bonjour!🇫🇷 毎週金曜日更新のフランス滞在記をお届けします。Stay Home編ではコロナ禍のフランスから帰国し、自主的に14日間の自宅待機中に感じたことを綴っています。今号は、当時3歳の娘が語った「コロナウィルス」について。
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2020年3月30日。Stay Home11日目。
家族三人で家の中でギチギチになっているとなかなかストレスが溜まるので、広い場所に出て、遠くを見た方がいいなと思った。そこで、お隣の笠間市までちょっとお出かけ。芝生にシートとスケッチブックを広げて娘と絵を描いた。
絵を描きながら、娘が「コロナのおはなし、わたしこわいの」と言った。ハッとした。帰国してからと言うものの、家にいても、何かを届けにきてくれた友人とも、コロナの話ばっかりだ。彼女からしたら何がなんだかわからないよねと思った。急にお外に出てはいけないことになって、急に大人たちはマスクをつけるようになって、急に何度も手を洗わなくてはならなくなって。しかもウィルスは目に見えないので、何にも変わらないように見える日常の中で、急に大人たちが緊急事態感を醸し出して世界が張り詰めてくる。
シュタイナー教育で、7歳までの子ども達にとって「この世界は善で、安心安全な場所であると言う感覚が大事」ということを習ったけれど、まさにそれがぐちゃぐちゃになっている。彼女の身になって考えてみると、どんなにか怖いだろう…と思って、言葉を失った。
ウィルスとは何か、とか、感染するってどう言うことなのか、とか。
わたしが絵に描いて説明することもできただろうけれど、何か違う気がして、先ほどの流れはそのままに二人でスケッチブックにいつも通り絵を描き続けた。
娘は身体を大きく動かしながら、黙々と、真っ白な紙を色で埋めていった。大人のわたしには、まるで言葉では伝えられない思いを紙を通してわたしにぶつけているように見えて、申し訳なさが込み上げてきた。大人ってずるいよね。あなたたちだって、立派に一緒に生きているのに、いつも説明するのを怠ってしまうんだよね。そんなことを思いながら、ただじっと観察していた。
すると、一つのストーリーが出来上がってきた。
そして、ポツリと娘が言った。
「ママ?コロナはにんげんなんだよ?しってた?」
小さな声だったけれど、そこにはとても力強さを感じた。
そうだね、その通りだよ。と心の中で答えた。
その後さらに、ストーリーにメロディがつき、踊りがつき、近くにあったストーンサークルのようなモニュメントが一つの舞台のようになっていった。まるでミュージカルを見ているかのようだった。
彼女がうたった
平和の歌。
最初、観客はわたし一人だったが、散歩に通りがかったご高齢の女性が足をとめ、こちらをじっと見ていた。この後、ちょっとしたハートウォーミングなやり取りがあったのでした。
・・つづく。