083. 2年越しで気づく、夫からの愛情|オーベルニュ編
bonsoir!🇫🇷 毎週金曜日更新のフランス滞在記をお届けします。コロコロとした鮮やかなステンドグラスの光に包まれたVic en Carladésの教会を後にして、私たちは次の目的地、Puy de Dômeへ。
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教会を後にして、さらに車を走らせ、目指したのはPuy de Dôme。
フランスのお臍、オーベルニュ地方。ここはかつて火山活動が活発で、肥沃なこの土地には渓谷に牧草地帯など豊かな自然が育まれ、日本でもおなじみのミネラルウォーター「ボルヴィック」の産地でもある。また、このあたりは温泉の地としても有名で、かつてはローマ人やケルト人も病の治癒や健康のためのここの水を使っていたのだとか。
まさに、火と水の恩恵に溢れている街!
日本に帰国してから知ったのだが、わたしがいつも使っているクレイパウダーもオーベルニュ産のものだった。
娘のしつこいアトピーととても相性が良く、親のわたしたちが使っても気持ちよく、家族ともども癒された、オーベルニュのクレイなのでした。
火と水の恩恵に溢れる街、改め、火と水の恩恵に癒される街。
なんだか深い縁を感じるぞ、オーベルニュ。
このオーベルニュのピュイ山脈の主峰ピュイ・ド・ドームには大きなカルデラがあって、山頂は、あの物理学者のパスカルが重力の存在を立証した場所としても知られているのだとか。なんとなくロマンを感じさせる場所だ。
温泉に活火山にカルデラ・・。大好きなもの3点セットが揃ったこの地に大きく心をくすぐられる夫は、この地の旅をずいぶん楽しみにしていた。
そういえば、日本にいた時から「どこへいく?ここ温泉があるんだよ!?カルデラがあるんだよ」とか、サンチアゴのの巡礼路という曲がよくてYouTubeで聞いているんだとか、とても嬉しそうにしていた。だが、その時のわたしは、楽しむよりも以前に刻一刻と迫り来る異国の地での子育てが不安で仕方なく、そんな夫のウキウキした言葉はほとんど右から左、状態だった。
だから、オーベルニュ地方のことを思い出したり書こうとすると、ピリリと小さな罪悪感が胸の内にやってくる。
もっと彼と一緒に楽しめたらよかったなぁ。
と思えるのは今のわたしだからなのだろう。色んなことが過ぎ去ってあまり手がかからなくなった5歳の娘を育てている今のわたしだからそう思えるのだろう。
決して独身時代のような楽しみ方ではなかったかもしれないし、大変に感じることの方が多かったけれど、こうして振り返るとポロポロと「あぁ、これも、あれも楽しかったな」としみじみ感じ入る。当時味わう余裕のなかった喜びや感情の破片みたいなものが今は遠いフランスの地から文章を書くたびに手元に届く感覚なのです。
それはきっと、疲れて沈んだわたしのモードに引っ張られずに、楽しむことを提案し続けてくれた夫の愛情なのだろう。2年という時を経て、今それ気づく。
気恥ずかしいけれど、ちゃんと伝えないといけないな。
ありがとう、って。
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車を走らせていると、ちょっと前まで晴れていたのに、サラサラと細かい雨が降ってきた。かすんだ田園風景の奥には虹が広がっていた。