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【ネタバレ】虹色の特設ステージ――「ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会 完結編 第1章」レビュー&感想

ときめきの「ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会 完結編」 第1章ではニジガクが新たなイベントに参加する。スクールアイドルグランプリ、それは歩夢達の虹色の特設ステージである。


1.ソロアイドルとソロイベント

「今、もっとも推せるスクールアイドル」を決めるイベント、スクールアイドルGPX(グランプリ)の招待状を受け取った虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会。会場の1つ沖縄を訪れた歩夢、かすみ、しずく、彼方、エマ、ランジュの6人を待つものは一体……!?

TVシリーズ2期の放送終了から2年、OVAを経て完結編が公開となった「ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会」。3部作の始まりとなる本作ではスクールアイドルGPX(グランプリ)の開催が明かされる。学校単位ではなく個人でエントリー、配信アプリを通して投票で「今、もっとも推せるスクールアイドル」を決める……ラブライブ!シリーズでソロアイドルスタイルを切り開いてきたニジガクのためにあるかのようなイベントだ。実際、部員の1人桜坂しずくが持ち歌「Rise Up HiGH!」でスタートダッシュを決めるなど同好会のメンバーはグランプリと会場の1つである沖縄を堪能していたのだが――同じく参加した他のスクールアイドルとの会話などから彼女達は、意外にもこのイベントは自分達と合わないのではないかと感じるようになっていく。

先述したようにこのイベントは、スクールアイドル個人が競う大会だ。虹ヶ咲学園のように人数の多い学校は一見有利に見えるが票が割れやすく、上位を狙うなら個々人が目立つような配信をしていかなければならない。すなわち、そこに生まれるソロは自由意志ではなく必然によるものだ。これは個性豊かなスクールアイドルが思い思いに活動できる場のように見えて、実際はむしろ1つのスタイルを強いるイベントなのではないか……ソロと1人は違うとメンバーの一人・近江彼方が言うように、そういうジレンマが今回のニジガクメンバーにはある。多くの人に知ってもらいたくて参加した上原歩夢はそんな自分がランジュ(鐘嵐珠)と競っていいのかと悩んでしまうし、歩夢と本気で競うことを望むランジュですらイベントのスポンサーでもある母親のえこひいきを感じてイベントを降りようとしたほどだ。

ソロアイドルのためにあるようなイベントがしかし、ソロアイドルたるニジガクの理念に一致しない。スクールアイドルグランプリは晴れ舞台であると同時に、歩夢達にソロアイドルとは何かを問い直す大いなる試練とも言える。そして、スクールアイドルの物語である本作は当然ながらその答えをステージの中に見出すこととなった。

2.虹色の特設ステージ

ソロアイドルとは何か。それを問い直すにあたって本作では、舞台である沖縄に住む二人の少女が登場する。石嶺小糸、そして沖縄の楽器である三線(さんしん)を引く赤嶺天……二人はスクールアイドル活動をするも上手く行かずコンビを解散してしまっていたが、ひょんなことから彼女達と知り合ったニジガクメンバー、エマ・ヴェルデは天を誘ってコラボライブを披露する。大評判のライブを見た小糸は自分が足を引っ張ってしまっていたのだ、と去ろうとするが、呼び止めた天が伝えたのは小糸に日々感じていた小さな不満、そして小糸とこそ一緒にスクールアイドルを続けたい思いであった。エマがコラボライブやその練習を通して伝えたのは、小糸に好きも嫌いもちゃんとぶつけること=ソロとしてぶつかり合うことだったのだ。

またランジュは先述したように母が自分をえこひいきしていると感じイベントから降りようとしたが、蓋を開けてみればこれは誤解でランジュの母は言葉が足りずランジュの方は思い込みが激しすぎただけであった。事情を知った同好会部長、かわいいかすみんこと中須かすみが引き合わせたことで二人は互いの本心を知るが、これも見ようによっては「ソロ」のぶつかり合いであろう。ランキングに表示される形だけがソロではないし、先に彼方が言ったようにやはりソロと1人は違うのである。

ニジガクメンバーの関係性とは「仲間だけどライバル、ライバルだけど仲間」である。2期ではユニットも組んだように、1人で終わらぬ1人1人のぶつかり合いこそがニジガクのソロアイドルだ。ランジュはスクールアイドルを巡って海を渡った自分と歩夢にぶつかり合えるものを感じていたことを明かし、歩夢もそういう競争は望むところだと受けて立つが、ここにはまさしく「仲間だけどライバル、ライバルだけど仲間」の関係がある。それを象徴するように、ランジュが母に頼み作ってもらった特設ステージで二人が行ったライブは二人のソロステージが連結して魅力を高め合うものであった。そう、彼女達のライブは二人のソロ・スクールアイドルのライブであると同時に、二人を表現するだけのものに留まっていない。ランジュと歩夢の歌が告げるのは、スクールアイドルグランプリと本作の理念がぶつかり合って生まれる新たな物語の幕開けだ。いきなりの沖縄、いきなりのライブといきなりづくしで始まった完結編は、実は第1章の全てがこの幕開けのためにあったと言っても過言ではないだろう。

外伝的な位置づけから始まり、シリーズの中でも他作品とは異なる立ち位置にあるニジガク。その最後のステージはかくて華やかに、「ときめき」いっぱいに始まった。
東京から飛び出して描かれる「ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会 完結編」。スクールアイドルグランプリを舞台とした本作は、歩夢達を虹色に彩る特設ステージなのである。

感想

以上、えいがさき第1章レビューでした。ステージを始める際に「ENTRY」と表示されるのが印象的で、これは自分達のステージを決める話なんじゃないかな……と感じたのを文章にしてみました。

昨年OVAの上映があったのでそこまで久しぶりという感じはしませんが、TVシリーズ2期からもう2年経ってるんですね。12人のメンバーを2分割して話を作っていくのはなかなか新鮮だなと思います。かすみんは全編がオンステージな感じでしたが、歌がないのはやはりちょっと寂しい。第3章で歌って踊る彼女に期待したいと思います。さてさて、もう1組が主役になる第2章はどんなお話になるんでしょうか。

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普段はTVアニメのレビューを1話1話ブログに書いています。2024年夏は「負けヒロインが多すぎる!」「しかのこのこのここしたんたん」「真夜中ぱんチ」の3作をレビュー中。

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