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manu- と mani-

マニュアルとかマニュファクチャーなどの語根 manu-は、ラテン語の manus (手)が語源。

まず、これに接尾辞 -al (~の)が付いたマニュアル manualは、文字通り「手の、手先の、手動の」という形容詞だが、「手順書、手引書、取扱説明書」という名詞としても使われている。

一方、別の語根-fact-(作る)と接尾辞 -ure(~すること)で構成されるマニュファクチャーmanufacture はもともと「手工業、製造(業)、製造品」という名詞だったが、動詞として「製造する、加工する、(大量)生産する」という意味でも使われるようになった。
さらにこれに接尾辞-er(人)が付いたmanufacturer は「工場主、(大規模)製造業者」。
ちなみに、接尾辞の部分が -ory(~所)になった manufactoryは「製作所」は、今ではファクトリーfactory「工場」にとってかわられてしまってるけど、旧い手作業の趣が感じられる言葉だよね。

また、語根-script(スクリプト)と合わさったマニュスクリプトmanuscriptは、「手書き本、写本」から「台本、脚本」ともなり、さらにはコンピュータプログラミングの「定型手続き」というふうに広がっている。


この語根manu-は、また mani-の形もとって、次のような語群を作り出している。

まず、マニキュアmanicure。今ではほぼほぼ 「手の爪の手入れ」に限定されているけど、本来は 「手のケア」という 意味。mani-(手の)+-cure(ケア)と分解できる。

同じくmani-という形の語根で、マニフェストmanifestという語があるが、こちらは mani-(手の)+-fest(打つ)で、「(手に取るように)明らかな」という形容詞だ。
¶ a manifest mistake 明らかな誤り

また、心理学用語のmanifest dream「顕在夢」は、潜在意識が象徴的なかたちであらわれる夢のこと。
たとえば、今の生活から抜け出したいけど無理だから意識しないようにしてる人が、急に体が浮き上がって窓から飛び出していく夢をみる、みたいなね。

ちなみに、以前日本の某政党が「政策綱領、政権公約」という意味で使ったマニフェストは、イタリア共産党から世界に広まったmanifesto(イタリア語「声明(文)・宣言(文)」)か、1848年に英国のピール首相が有権者に配布した「タムワース・マニフェストTamworth Manifest」あたりを真似たものだろうね。いずれにしろ語源は英語の形容詞manifest と同じで、<(政党方針を)明確にしたもの>というニュアンスだ。

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