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音だけで聴く The Lamb Lies Down On Broadway ビギナーズガイド

ビギナーズガイドなんてちょっとおこがましいのですが、ある程度ジェネシスを聴いている方の中にも、このThe Lamb Lies Down On Broadway(邦題:眩惑のブロードウェイ)については、「とっつきにくい」「難解でよくわからない」という意見をよく耳にします。

それ、とってももったいないと思うのですね。確かにこの作品は、ストーリーテラーとしてのピーター・ガブリエルが炸裂してる感じでして(わたしは中2病っぽく感じてますがw)、アルバムのインナースリーブがみっちりと難解(といわれる)ストーリーで埋め尽くされていて、それに基づいた曲の歌詞も、まあ「なんじゃいな?」的なものが多いのですね。

でも、アルバム内には、極めてジェネシスらしい、美しいメロディや、素晴らしいアンサンブルが溢れているのです。例えば、アルバム中盤のThe Carpet Crawlers などは、歌詞で歌われる奇怪な光景(恐らくこの歌詞は、子宮内を卵子に向けて移動する精子がモチーフとされている)など全く気にせずとも、その音世界に酔うことができるのです。

それに、英語を母語とする人たちは、音だけに酔おうと思っても、否応なくあのへんちくりんなw 歌詞が意味の分かる言葉として耳に入るわけでして、むしろ英語がわからない日本人の方が、言葉の意味なんかまるで気にせずに、メロディだけに酔うことが出来るはずなのです。そういう意味では、Lambをサウンドだけで味わうには、日本人は英米人よりもアドバンスがあると思っていいのです(笑)

そこで、まさに50年近くも Lamb を聞き続けてきたわたしが、歌詞やストーリーの意味などまるで気にせずに、そのサウンドだけで曲をオススメしてみようというのがこの記事です。

ジェネシスというのは、何がどう他のプログレバンドと違うのか、わたしの音楽知識ではなかなかくわしく表現できないのですが、最初聞いたとき「何だかよくわからない」という印象をもつ人が多いバンドのような気がします。わたしも最初はまさにそうだったんです。ところが何度か聞いているうちに、いくつかのフレーズが耳に入るようになると、いつの間にか芋づる式に周辺の曲が耳に入ってくるようになるのです。(これは、多分超クセの強いトニー・バンクスを中心とした彼らのコード進行とかメロディ進行にだんだん慣れてなじんでくる結果ではないかと思ったりするのですがw)そして、そうなれば、もう唯一無二のサウンド世界に浸れるという悦楽が待っているのです。

ストーリーや歌詞の内容が「難解」「わかりにくい」と言われるLambも、そんなの気にせず、いくつかの曲だけをキーにしてその世界へ入り込めば、絶対大丈夫です。

では、はじまりはじまり(^^)

●メロディ、メロディ、メロディ

とにかく言葉やテーマにとらわれず、メロディとバンドのアンサンブルだけを聴いてください!
歌詞の内容なんて、とりあえずどーでも良いのですw

Hairless Heart

いきなりインストですが、ゆったりしたアコースティックギターに続いて、ティーブ・ハケットのバイオリン奏法のメロディ、そしてトニー・バンクスのシンセサイザーのリードとバックのメロトロンが美しいメロディを奏でます。曲は突然終わるのですが、アルバムではすぐ次の曲がはじまります。

Countin out Time

その次の曲がこれです。この曲は、アルバムからのシングルカット第一弾です。それだけに、少し意識したんでしょうか、割とわかりやすい歌メロディで作られています。この曲は実はピーター・ガブリエルの個人作品のようです。

The Carpet Crawlers

そしてジェネシスのメンバーも大事にしているこの曲です。この曲もシングルカットされてまして、Countin out Timeより売れたそうです。このアルバムは、ピーター・ガブリエルがストーリーと歌詞をひとりで担当し、残りの4人が作曲担当と分かれて制作されたのですが、その中でピーターも作曲に参加した曲と言われています。それだけに5人組時代のジェネシスの最後を象徴するとされる曲で、1999年にピーター・ガブリエルとフィル・コリンズのツインボーカルで再録されていますし、2022年に活動を終了したジェネシスが、最後のライブでアンコールのエンディング曲として選んだのもこの曲なのです。ちなみに、アルバムでは、Hairless Heart 〜 Counting out Time 〜 The Carpet Crawlersの3曲はこの順番にならんでいます。

Anyway

トニー・バンクスの印象的なピアノで歌がスタートしますが、途中からガラッと調子が変わり、今度はスティーブ・ハケットのソロがでてきます。こういう曲調の変化はまさにジェネシスですよね。

The Lamia

こちらもトニー・バンクスの美しすぎるピアノが全編でフィーチャーされていて、中盤〜後半はメロトロンで静かに盛り上がり、最後はスティーブ・ハケットのギターソロで美しく締めるという構成です。美しいピアノ、切ないギターに酔える名曲です。


●トニー・バンクスのメロトロンが聴きたければまずこれ

そして、もう一つの視点、メロトロンです。皆さん、メロトロンお好きですよね(笑)

Lambは、トニー・バンクスのメロトロンの名演が詰まったアルバムなんです。このアルバムでは、トニー・バンクスは全編にわたってハモンドオルガンのコードトーンよりもメロトロンのコードトーンを多く使っているのです。これはジェネシスの以前のアルバムでは無かったことです。なのでLambは、トニー・バンクスが生涯で一番メロトロンを使ったアルバムと言っていいでしょう。先に挙げた、Hairless Heartも素晴らしいメロトロンが鳴ってます。トニー・バンクス自身は「メロトロンは好きじゃない」とか公言してる人なのですが、どっこい、弾けばとんでもなくすばらしいメロトロンプレイができる人なのです。あえて、そういう曲だけピックアップしてみます。

Fly on a Windshield

アルバム2曲目で、いきなりこのメロトロンの洪水なんですよ、旦那。メロトロンだけじゃなく、そこに絡むスティーブ・ハケットのギターも聴き所ですね。

The Camber of 32 Doors

イントロのスティーブ・ハケットのリードギターのバックで、荘厳なメロトロンが鳴ります。歌が始まるとあんまり出しゃばってこないのですが、このイントロはすばらしい!(^^) 途中ハモンドオルガンのロングコードトーンが印象的に使われるパートがあるのですが、そういうのは、アルバム内でここだけなんですよね。

Silent Sorrow in Empty Boats

間奏曲的な小曲ですが、素晴らしいメロトロンコーラスの曲です。これほどのメロトロンコーラスは、まず滅多に無いと思います。

どうでしょう。万人向けではないのは百も承知で、この辺をとっかかりに、まず音だけで何曲か聞いてみるのも一興だと思うのです。本当はわたしは、このアルバムは最初から最後まで聴き所しかないと思ってるのですが、敢えてピックアップしてみました。

そして、アルバムのストーリーや内容について、「いったいこれは何なんだ?」と思った人、ずっと思ってる人は、いつかわたしが日本語で記事書きたいと思ってますので…(^^) わたしも50年近くも聞き続けた割には、それほどきちんと理解しているわけでもないのですが、このまま死ぬと、心残りになりそうなので、今さらではありあますが、最近のLamb関連の資料をいくつか集めながら読みはじめました。本当の50周年(2024年11月!)くらいまでには何とかしたいと思っております…(笑)


過去記事

【The Lamb 50周年記念!】ただいま連載中


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