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あり得ない体験をもたらしてくれる、あり得ないトリビュートバンド The Musical Box
The Musical Box のタイムマシン体験記
The Musical Box というのは、カナダ出身のジェネシスのトリビュートバンドでして、ワールドツアーをやるほど気合いの入ったトリビュートバンドなのです。彼らについては、以前こんな記事も書いております。
その The Musical Box が、2024年11月11日(月)、川崎のクラブチッタにてたった1回きりの来日公演を行ったのです。
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それ以外の楽器やエフェクターは、当時と同じ物が使われているそうです。
今頃になって、ジェネシスのピーター・ガブリエル時代を専門にやるトリビュートバンド、それに当日の出し物は、Genesis Liveという1973年リリースのライブ盤の元となったステージの復刻ということで、わたし自身は本当に楽しみにしていた一方で、「これ、お客さん入るのかなあ」…とか心配していたのです。ところが、いざ蓋を開けてみたら、クラブチッタはほぼ満員! 終演後はXに絶賛の嵐が飛び交う状態で、これには驚いたのでした。
【Set List】
1 Watcher of The Skies
2 The Muisical Box
3 The Fountain of Salmacis
4 Get'em Out by Friday
5 Supper's Ready
6 The Return of the Giant Hogweed
(encore)
7 The Knife
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8 Seven Stones
9 Can-Utility and The Coastliners
Genesis Live 時の完全復刻は7のThe Knifeまで。当時のステージは時間も短めでアンコールも1曲だけだったのですね。8と9は、おまけの演奏(その選曲がまた渋いw)なのです。この時期まだピーターは2でお面被ってなかったとか、エンディングの腰ふりはほとんどやってなかったんだとか。どの曲か忘れてしまったのですが、80年代にMamaのライブでフィルが Ha ha ha ! とやるときに下からのスポットで顔を照らす演出をしていましたが、それの元ネタはこのときのピーター・ガブリエルではなかったのかと感じた瞬間もあり、いろいろな発見がありました。
それにしても、はじめて目の前で体験した The Musical Box は、聞きしに勝る凄さでした。冒頭、Watcher of The Skies のあのメロトロンが流れてきた瞬間、「あれ、ずいぶん音が美しい」と思ってしまったのですが、それは、彼らがデジタルメロトロンを使用していたからなのですね。でもそれもほんの一瞬の事。特徴的なドラムのシンバルの刻みが耳に入った次の瞬間、「おい、フィル・コリンズだよ!!」と思ってからは、もう73年のジェネシスが目の前で演奏しているとしか思えない状態に連れて行かれてしまいました。曲間に、ピーター・ガブリエル(役の人ですがねw)が、「コニチハ!」とかちょっとだけ日本語を交えたMCするたびに、ほんの少し現実に引き戻された感じがしましたが、それとて、もし73年にジェネシスが来日していたら、それくらい喋っただろうな、くらいに思ってからは、ほとんど気にならなくなってしまいました。
今回の再現と同じ時期のSupper's Ready 。ピーターのA Flower? はこのときから出ていますが、エンディングのピーターの衣装とかはこの後少し変化するわけです。そういうことも実際に見るとよく分かるのですよ。
ということで、本当にあの日あの時のクラブチッタの空間は、The Musical Boxによって、タイムマシンと化し、一気に50年以上のタイムスリップの結果、昔のジェネシスのステージを観客全員が体験してしまったということなのです。本当に冗談抜きで、世界的なトリビュートバンドのクオリティの高さに絶句すると共に、もはやここまでに至ると、もう伝統芸能の語り部レベルではないのかと思った次第です。
まあそれもそのはずというか、The Musical Box は、ちょっと次元の違うトリビュートバンドなのです。もともと、オフィシャル公認というか、彼らのステージ復刻にオフィシャルが協力しているだけでなく、メンバーとも交流があり、本物のwフィル・コリンズとスティーブ・ハケットが、彼らのステージにゲスト出演したこともあるという本格派なのですよ。そして、なにせ全員がとてつもなく上手いし、似てるんです。トリビュートバンドは、ボーカルの声質がどれくらい似てるかということでかなり左右されるのですが、これがもうあり得ないほどよく似てる。さらに、他のメンバーの演奏が、これまた実に着実にコピーされているのです。
今回のライブのチラシには、ジェネシスのマイク・ラザフォードの「本物より凄い」という冗談のようなコメントが記載されていましたが、これもジョークではなく、彼の本心じゃないかと思ったりもします。というのも、ジェネシスはデビュー以来どんどんとバンドとして上手くなっていった歴史があり、73年頃はまだ発展途上といって良い時期です。だから今の The Musical Box の演奏を聴いて、ラザフォードが「あの頃の俺たちより上手いじゃん」と思っても不思議ない感じでして、それほどのクオリティなのです。
彼らの定番の出し物としては、もう一つ Selling England 時のツアーの復刻ステージがあるのです。ピーター・ガブリエル(役の人w)が当日ステージで、「また来ます、次は Selling England やります」的なMCしていましたので、何が何でもその復刻ステージでまた来日していただきたいものです。
70年代当時、一貫してジェネシスには批判的な記事を掲載することが多かったイギリスのニュー・ミュージック・エクスプレスという音楽雑誌があるのですが、そういう雑誌の誌上読者人気投票で、ローリング・ストーンズも、ピンク・フロイドも、EL&Pも、ザ・フーも押しのけて、1974年のベストライブ1位に選出されたのが、ジェネシスのSelling England のステージなのです。
それほどのステージを、ぜひまたタイムスリップして体験したいのです。これこそ、冥土の土産となるのではないかと。次もぜひ(^^)
これが Selling England by The Pound のツアーの完全再現ステージですね。
ずいぶん前にこんな記事を書いたこともありまして、わたし、けっこうトリビュートバンド好きなんですよね、実は(^^)