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ロックバンドのライブをYessongsで初体験した話

 そんなわけで、中3になった1974年にEL&PのBrain Salad Surgery を聴いて、一気にプログレ少年と化してしまったわたしなのですが、その勢いをブーストしたアルバムと言えば、何と言ってもこれ、Yessongsなのですよね。

 アナログ盤3枚組というボリュームのレコードは、ちょっと自分で買うにはなかなか気合いがいるアルバムだったのですが、そこはさすがの東京の私立中学。すでに持ってる同級生が複数人いたんですよね。当時発売されたばかりのこのアルバムは、やっぱり級友のロックファンの間ではスゴイ!と話題になっており、貸してもらう順番待ちみたいな状態になっていて、わたしの所に回ってきたときには、結構ジャケットの隅とかがすり切れていたりという可哀想な状態になっていたのでした。そして、当時このアルバムは、プログレ云々の以前に、とんでもなくすごいロックのアルバムという認識が広がっており、EL&Pには興味なくても、こっちは聴くという人が多かったように思うんです。

 ということで、わたしはイエスの初体験をYessongsでしてしまうという事になったのです。EL&Pのときと同じように、いきなり最高傑作と呼ばれるアルバムに出会ってしまうわけなんです。これが良かったのか、悪かったのか、今となっては、あんまり良くなかったのではないかなあと思ったりすることもありますね。

 というのも、イエスって、The Yes Album(邦題:イエス・サード・アルバム 1971)、Fragile(邦題:こわれもの 1971)、Close To The Edge(邦題:危機 1972)を順にリアルタイムに聴きながらYessongsにたどり着いたら、その高揚感って半端なかったのではないかと思うんです。ところが、いきなりYessongsを聴いてしまうと、これらのスタジオ盤を後から聴く気がしなくなってしまうのですよね。これは、頭で思ってるだけではなく、直後にClose To The Edgeのスタジオ盤を聴いて、本当に「こっち聴く必要ないんじゃね?」と思ってしまったのです。それはFlagileを聴いても変わらなかったのですよ。それほどYessongsは凄かった。結局The Yes Album収録曲は、超パワーアップして収録されていて、スタジオ盤より全然カッコイイ、Fragileの主な曲、Close to the Edgeに至ってはアルバム全曲が、スタジオ盤と寸分違わぬような演奏でライブ収録されていて、Yessongsの後に、これらのアルバムを買うモチベーションが盛り上がらないという結果になってしまったからなんです。

 それと、もう一つYessongsで学んだのは、メロトロンという楽器の事でした。EL&Pのアルバムで聴いたことのないあのストリングスや、コーラスの音がライブで出せる楽器があるということは、このアルバムを聴いて初めて知ったのです。いろいろ調べるとなんとまあ珍しい機構の楽器なんですよね。また、ここでリック・ウェイクマンが使っていたシンセサイザーは、キース・エマーソンが使っていたのとはまた違う、ミニ・モーグ(当時はミニ・ムーグと言ってましたが…)という楽器であるということも知り、メロトロンとともに、メカ好き中学生にそういうのもグサグサと刺さったのですよね。

 こうなると次にイエス以上に聴いてみたくなったのは、リック・ウェイクマンのソロになるわけなんです。彼は、1973年にThe Six Wives of Henry VIII(邦題:ヘンリー八世の六人の妻)、翌1974年にJourney to the Centre of the Earth(邦題:地底探検)をリリースして当時乗りに乗っていた感じで、さらに1975年に初来日するということで、当時わたしはどちらかというとイエスそっちのけでリック・ウェイクマンを追っかけていた感じすらあったのです。(リック・ウェイクマンについては、また改めて書きたいと思います)

 EL&Pも1974年にLadies & Gentlemenという、Yessongsの向こうを張ってアナログ3枚組のライブ盤を出すのですが、Yessongsを聴いたときにはまだこれは聴いてませんでした。それどころか、リアルのライブにもまだ行ったことすら無かったんです。そんな中学生が、いきなりYessongsでロックバンドのライブというものに、触れてしまったわけなんです。よりによってYessongsですよ(笑) とてつもなく複雑で長い曲を一糸乱れぬアンサンブルでライブで再現するとかの、もう神業としか思えないライブに触れてしまったことが、まあその後の人生をある方向にねじ曲げた原因の1つではないのかと思ったりするわけです。

 それにしても、Yessongsがリリースされたのも1973年なんですよね。EL&PのBrain Salad Surgeryも、ジェネシスのSelling England By The Poundもおんなじ年のリリースです。あ、忘れてたけどピンクフロイドのThe Dark Side Of The Moon(邦題:狂気)リリースもこの年ですねぇ。プログレ的にはこの年はとんでもない当たり年と言うことなんですね。当時は日本版のリリースというのは英米より数ヶ月くらいは遅れるのが普通だったので、当時のタイムラグを考えると、翌1974年、わたしが中3の時にこういうのを聞けたというのも、ほぼリアルタイムでこういうロックの新しい波を、ざぶんざぶんとかぶっていたのだということでしょう。

 ところで、イエスなんですが、こうしてYessongsにシビれまくったあと、これも1973年リリースのTales From Topographic Oceans(邦題:海洋地形学の物語)をすぐに聴きました。このアルバム、実はYessongsと同じ年にリリースされていて、やっぱり当時の級友から借りて聞いたわけなんです。これはご存じアナログ2枚組にたった4曲しか入ってないという、まあよくやるよなあ、、という感じのアルバムだったのですが、正直そこまでこれには刺さらなかったのです。そうこうするうちに、1974年にキーボードがパトリック・モラーツに変わって製作された、Relayer、そしてちょっと時間を置いた1977年に、またリック・ウェイクマンがカムバックしてリリースされたGoing For The One(邦題:究極)、翌78年のTormato当たりまでは、しっかりとリリースされるたびに聞いていたんです(ちょうど高校生〜大学生になる頃)。でも、なんかニューアルバムを聴くたびに、ものすごく期待するのに、結局あのYessongsの興奮と感動がよみがえらないというか、何か違うものを感じるというか、何か足りないな・・・という意識にとらわれて、もやもやしてしまったのですよね。やっぱり、なんかこれはYessongsの呪縛にとらわれてしまったのではないかと思うのですね。

 さらに、ちょうどこの頃は、個人的にはどんどんとジェネシスにのめり込んでいた時期でして、その反動もあり、イエスへの熱はだんだんと冷めていってしまい、結局今になっても、Yessongsしか聴いてないみたいなことになってしまったのでした。


Yessongsの中で一番好きだったのはこの曲 Perpetual Change。後半のスティーブ・ハウのギターにシビれました。イエスはこの時代のライブ映像記録がほとんど残っていないのが残念ですね。この演奏は2000年のものです。ちなみに、Yessongsのこの曲はビル・ブルーフォードがドラムたたいてます。

【追記】

Yessongs時代の動画がほとんど残ってないとか言ってましたが、とりあえずこういうのありましたね。画像もリマスターされているようです。残念ながら Perpetual Changeは入ってないのですが、Yours Is No Disgraceが入っていて、これはめちゃくちゃかっこいいです。この動画見ると、スティーブ・ハウのギターソロって、結構アドリブなんですね。

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