プログレ中学生、ピンク・フロイドの洗礼を受ける
EL&Pでプログレに目覚め、Yessongs でプログレバンドのライブの凄まじさに触れた1974年。こうなると、次なるプログレバンドのビッグネームといえば、ピンク・フロイドとキング・クリムゾンしかいないわけです。
このとき、どっちを先に聞いたのかはあんまり記憶に残ってません。ただ、ピンク・フロイドは1973年に、あの名盤 The Dark Side Of The Moon(邦題:狂気)を発売して、これが売れまくっていたため、当時同級生何人かがこのアルバムをもっていて、これが結構友人間の間を流通していたのでした。ところが、キング・クリムゾンは当時まだあまり持っている奴がいなかった。なので、おそらく次はピンク・フロイド、特にThe Dark Side Of The Moonを聴いたのではないかと思うんです。
で、このアルバムにハマらないわけがないですね。これはこれで、イエスとはまった全く違う雰囲気のバンドで、こんな音楽もあるんだということで、またまた新たなプログレの地平に目覚めてしまったわけなんです(笑) すると今度は俄然ピンク・フロイドの他のアルバムを聞いてみたくなるわけです。次にAtom Heart Mother(邦題:原子心母)も、やっぱり持ってる友達がいて、すぐに借りて聞くことができました。これもまたThe Dark Side Of The Moonとはかなり違う路線でしたが、結構気に入りました。ところが、さらに深掘りしようとすると、今度はそれ以外のアルバムを持ってる友達がほとんどいないのでした。当時中学3年生ですからね、そうそうプログレバンドの昔のアルバムなんて持ってる奴は、東京の私立中学といえどもいなかったわけです。
でも、この時The Dark Side Of The MoonとAtom Heart Motherのインパクトは、自分にとってはかなり強かったんです。イエスは、Yessongs聞けばもう以前のアルバム聞かなくても満足って感じになってしまっていたのですが、ピンク・フロイドはそうならなかったのですよね。そこで、わたしは自腹でピンク・フロイドのアルバムを買うことを決意したのです。ところが、やっぱりこういう自分にとって新しいバンドのアルバムを深掘りしようとすると、やはり当時はなかなか情報がないわけです。買う前にちょっと試聴できるようなこともないし、ピンク・フロイドの昔のアルバムなんて、当時FMラジオなんかでもまず流れないわけなんです。ということで、結局適当にレコード屋の店頭でジャケット眺めながら、えいやっと買ってしまうしかなかったのですね。こうして買ったのが、Ummagummaという1969年リリースの2枚組でした。
なんでこんなアルバムを選んだのかというと、おそらくYessongsのイメージがまだ強烈で、2枚組のうちの1枚がライブ盤だったというのと、ジャケットのアートワークに惹かれたのだと思うのですね。これが60年台のアルバムだという意識はほとんどなかったと思います。今考えれば、The Dark Side Of The MoonとAtom Heart Motherの間の1971年にリリースされたMeddle(邦題:おせっかい)あたりにしておけば良かったんですがね。
で、このアルバムをいそいそと買ってきて、自宅のレコードプレーヤーにかけて、悶絶しました。なにせ、ライブ盤といっても、Yessongsしか知らない身には、まるでライブの雰囲気が違うのですよね。なにせ1960年台のライブ音源な訳ですからね。それにイエスですっかり虜になったメロトロンの音も聞こえない(そもそもピンク・フロイドは、あんまりメロトロン使ってませんでしたよね)。さらに、もう1枚のスタジオ盤の内容がこれまた、わけがわからない! 全くもって刺さらずに、ひっくり返ってしまったのでした。
というわけで、頑張って買った2枚組のアルバムで、手痛いピンク・フロイドの洗礼を受けてしまったというわけなんです。まあ、Atom Heart Motherにも、Alan's Psychedelic Breakfast(邦題:アランのサイケデリック・ブレックファスト)なんてとんがったものが入ってるくらいなので、もっと警戒すべきだったのでしょうが、さすがに、プログレの奥深さをまだ知らない中学生には、そこまで想像力が働かなかったのでした(笑)
おかげで、「昔のピンク・フロイドはちょっとなあ〜」という印象が固定してしまったわけです。もちろんこのとき、世界中の誰もが待ち望んでいた、The Dark Side Of The Moonの次のアルバムは楽しみにしてましたよ。でも、そのアルバムにしても、リリース直後に買うようなことはなく、やっぱり直後に買った友人から貸してもらって聞いたのを覚えてます。羹に懲りて膾を吹くというやつでしょうか(笑)
まあ、Ummagummaなんてアルバムを持ってる奴は同級生にはわたしだけだったので、これを貸して友人が持ってる他のアルバムを貸してもらうというネタには随分使ったようには思うのですが、正直このアルバムは自宅で1回聞いて以来その後は一度も聞いてないように思います。それでもまだ自宅のレコードラックには残ってますけどね。どんなに気に入らなくても、なんかこういう思い出とセットになっているために、なかなか手放すことができないんですよね。これがCDだったら、手放しちゃってるような気もするのですが、アナログレコードというのは、これまで一度もそういう気持ちにならないというのが不思議だったりしますね。