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人体における陰陽について


はじめに

 体において陰陽とは、温めたり、冷やしたり、動かしたり、静かにしたりする作用の方向性と大きさを表しています。これらの陰陽は平衡を保つことによって健康が維持されます。

陰の作用

 体において陰とは、「血、津液、精」による滋潤作用などに現れます。また、健康を維持するためには促進・成長するだけではなく、それを抑制する働きが必要です。陰は体において相対する陽を抑制(冷却・安静)する働きを持っています。

陽の作用

 体において陽とは「気」によって温めたり、推し動かしたり、促進・成長させたりします。陽は相対する陰を抑制(温める・推し進める)する働きがあります。

体内の陰陽のバランスが崩れる原因

 人も自然の一部です。ゆえに体の陰陽は気候の変化に影響を受けます。例えば、夏になり熱くなれば体内の陽が助長され陰が弱まり、冬になり寒くなれば体内の陰が助長され陽が弱まるのです。また、飲食でも体を温めたり冷やしたりする性質があり、過食するとその性質に応じた影響が現れます。さらに、臓腑の失調によっても体の陰陽に影響します。
 陰陽のバランスが保たれている状態が体にとっていい状態です。生活において自身の陰陽のバランスを意識することで病気を予防することができるのです。

体の陰が失調するとどうなる

 体における陰の性質を持つ物質は血、津液、精です。これらが減少すると相対的に陽が旺盛になります。この様な状態になるとのぼせやほてりが現れます。部分的に症状が現れることが多く、手のひらや足の裏に熱感が現れたり、胸部に熱感が現れたりします。寝汗が多く、頬が赤くなり、痩せ型が多いです。
 寒い環境に長く居続けたり、急激な気候変化で体を冷やしたり、体を冷やす性質の飲食を過食すると陰が旺盛になります。冷えは固まる作用があり気、血、津液の巡行を妨げてしまいます。

陰虚(体の陰が不足する状態)になるとどうなる

 陰虚は血・津液・精が減少し陰の機能が低下した状態です。陰が不足することで相対的に陽の機能が旺盛になり、ほてりやのぼせなどの熱症状が現れます。手のひら、足の裏に熱感が出たり、寝汗、ほほが赤くなる、やせるなどの症状が現れます。

陰盛(体の陰が過剰になった状態)になるとどうなる

 寒い環境で仕事をしたり、急激な気候変化や体を冷やす飲食の過食になどによって体を冷やすと陰が旺盛になります。冷えると体の気・血・津液は凝固(水が氷になるようなイメージ)してしまい流れが悪くなります。こうなると、寒がり、手足の冷え、顔面蒼白、下痢、小便が水のようになって量が多くなるといった症状が現れます。

陽虚(体の陽が不足した状態)になるとどうなる

 体の陽とは、気です。気は体を温める作用があります。陽虚とは体の気が不足している状態です。陽虚になると相対的に陰の機能が旺盛になり寒がり、四肢の冷え、顔面蒼白、腹痛、下痢などが現れます。また、陽虚は気虚の発展したものでもあります。よっって陽虚は気虚症状も現れます。気虚症状として汗かき、小便が薄い、精神疲労、倦怠感、食欲不振、息切などがあります。

陽盛(体の陽が過剰になった状態)になるとどうなる

 陽盛の症状は紅いという色の特徴があります。顔全体が紅い、全身性の熱感があるなど広範囲に現れやすいです。また、温めると増悪し暑い時期になると発症するなどがあります。喉が乾く、冷たい飲み物を好む、不快な熱感、言葉が多い(多言)、小便が濃い、便秘などが現れます。体の陽が炎上し心神に影響すると不安感や気分が悶々として落ち着かない状態になります。

この章のまとめ(ここを読めばだいたい解る)

・自然界に陰陽があるように体にも陰陽がある(陰陽学説)
・体において陰とは血・津液・精である
・体において陽とは気である
・陰と陽は相互関係にあり常にバランスを保とうとしている
・陰もしくは陽が過剰になったり不足したりすることで体に不調が現れる

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89字
この解説は以下の書籍に基づいて解説しています。 「新版 東洋医学概論」(2021年3月15日第1版第7刷発行)医道の日本社

鍼灸師です。東洋医学について、誰でも解るように易しく解説します。病気やケガで悩まれている方、身近な人へのケアをしたい方、セルフケアをしたい…

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