見出し画像

Charcuterie For Dogs #2 はじめての試作品と驚愕の事件

これはCurly Flats Farmの表庭での出来事、ドッグフードのブランド立ち上げへの道のりの記録です。



初めての試作品


いよいよ待ちきれずに試作が始まりました。


材料は

黒豚オス肉、わかめ、ブルーベリー、米、ニンニクです。
初回の材料は、とりあえず家にあるものを使いました。


紙のような繊維素材の細長いパック(ファイブラスケーシング)にミンチ状にしたフードを充填し、殺菌に必要な中心温度をしっかり監視しながらボイルしました。


その後は冷蔵庫で乾燥。


試作第1号は、ガッチリしっかりずっしりした作りのソーセージとなりました。
両端を金属のクリップで留めてぶら下げ紐をつけ、ソーセージ 工房で製造された手作りの雰囲気を出しました。

昆布の旨味がよい芳香を醸し出し、味付けはしていないのになぜか良い香り。黒豚の雄臭もさほど気になりません。


試しにファームの2頭の犬たちに与えたところ、狂喜乱舞。
一瞬で胃に収まり、おかわりを求めて1日中つきまとうことになりました。

そしてわかったことがありました。

紙のケーシングは切った際に取り除かなくてはならず、ミンチ肉からなかなか剥がれなかったために、いちいち形が崩れたり手が汚れてしまうことが気になりました。


思っていたよりもケーシングの表面は内側からエキスが滲み出てきて、ベトベトしてしまい、真空包装などのしっかりした包装が必要に見えました。


また、ボイルの際に金属クリップの隙間から内部に入り込んだ茹で水が、ソーセージをカットした時にザバーっと出てくるということがありました。

つまり、1番の美味しい栄養たっぷりのスーブがそこで失われているんではないか?!


そして、数日後ー



思わぬ事件



なんとその試作品をファームのラブラドール(配膳係のRufus)が1本丸ごとたべてしまったのです。


確保された主犯。
なかなかの頑固者💢



もちろんケーシングも金属クリップも丸ごと。

ケーシングも心配ですが金属のクリップはもっと心配でした。
かかりつけの獣医の先生に相談してみて、実はここで問題になったのは、ぶら下げ用の10cmほどの紐のほうでした。
これが犬の体内で内臓に絡まったりする可能性がありました。

急遽動物病院で処置をしてもらい、無事全て吐き出すことができましたが、この事件を教訓に健康に配慮した内容物ももちろんですが、美味しいものは食べちゃうかもしれないという安全面についても考慮が必要になりました。


再びケーシング選び


さてケーシング。
ファイブラスケーシングに思ったような利点を見出せなかったので、他の選択肢を検討することになりました。


・ボロニアソーセージのように少し太めのケーシング。
・そのままカットして食べさせられること。
・安全な素材。



候補に上がったのは

天然牛腸
コラーゲンケーシング


天然牛腸はいつも人間用のソーセージ 用品を調達している業者さんから入手可能です。

太さを求めると牛の腸になりますが、細くて長い羊腸(これがよくあるソーセージの太さ)に比べてずっと短く、厚みがあります。
イメージしている質感になるかどうか。


コラーゲンケーシングというのは、牛のコラーゲン、セルロースと少しのグリセリンを混ぜて作られたもので、太さも均一、長さも様々あり安価でなにより消費期限がありません。
なかなか魅力的です。
難点があるとすれば、目指している太さより細くなってしまうことです。

とはいえ、まずはいつもの業者さんから手に入る天然牛腸で2回目の試作品を作ることになりました。


製造に必要な許可を得る



仕様の模索と試作品作りと並行して、もっとも重要な仕事を進めなくてはいけませんでした。


ペットフード製造業者の許可を得ることです。


CURLY FLATS FARMではすでに人間用の「食肉処理業」と「食肉製品製造業」という営業許可を取っている小さな厨房があります。


今回はこの厨房を使って「ペットフード製造業」という営業許可を取りました。


昨今はペットフードの製造も「ヒューマングレード」、つまり人間用の施設で同じ衛生基準で製造するのがほぼ当たり前となってきています。


ペットフード製造業者の許可というのは、輸出入だとか込み入ったことをしなければ、実にシンプルで、必要事項を記入して都道府県の農政事務所というところに届出するのみで完了します。(ペットフード安全法という法律に則って運営するため管轄は農林水産省と環境省の共管になります。人間用は厚生労働省。所管の保健所に提出します。)


とはいえ、人間用の営業許可と同様に、原材料の受入記録や製品の仕様書、業務マニュアルなどHACCPの考え方を取り入れた管理が必要です。


しかもペットフードについては、(独)農林水産消費安全技術センター(FAMIC)という機関がペットフードの製造業者、輸入業者、販売業者に立入検査をします。

立入検査では、帳簿や適正な製造や表示が行われていることの確認、分析検査用の製品・原材料の集取等を行います。分析結果はなんとHPにて公表されることになります。


というわけで、人間用の食肉処理施設で製造するからには、また、すでに人間用の製造マニュアルなどの仕組みは稼働しているので、ペットフードも始めから同じ基準で管理する方がやりやすい。


改めてマニュアルなどの書類を山ほど作りました。


もっとお金をかけるとすると、こういう管理書類も全てタブレットで記録してクラウド保存できるのですが、そこはとりあえず当分の間はアナログ管理します。


その他、人間用の食品と同様に食品表示が必要になりますから、表示内容も調べてラベルを用意します。

フードの名称、犬用か猫用か、おやつか総合栄養食か
原材料、消費期限、保存方法などの他に、アレルギーの原因となりやすい物質が含まれるかどうかなど、人間同様に細かな情報を表記します。


こんな感じのもの。
ラベルプリンターの画面スクショです。
あくまでもサンプルです。


作ってみて気付きましたが、いろいろと誤解を招かないようにとか、事故につながるような間違いが起きないようにとか、とにかくいろいろな場面を想定しているうちに一番下の注意書きがどんどん長くなっていきます。


これは、内容によってはある程度プロモーションのなかで伝えていくことも必要かなと思いました。


また、試作を重ねて最終的に製品が完成した際には、食品検査機関に依頼して、成分やバクテリアなどの安全面の検査もしてもらいます。


というわけで、販売に至るまでには実際の製品の開発だけでなく、さまざまな手続きや準備が必要でした。

次回は・・・パッケージの仕様と試作品の開発その2です。