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あらゆる水とのたたかいーその2・飲み水


なによりも大切な水


No Water, No Life. No Blue, No Green

American marine biologist Sylvia Earl


それは飲み水です。
地上で暮らす、ありとあらゆるいきものになくてはならない水です。

特にここ、CURLY FLATS FARMのように畜産を生業としている場所で暮らすいきものたちは、自然に近い生活をしていてもどこかでやはり必ず人間の管理が必要です。

日頃食べている食事や水、住まいも人間が用意したものです。

さて、畜産というからには何らかの形で食に供されることになるいきものたちですから、その口に入るものにもできるだけ気を配ることになります。

特に飲み水、1日に5Lも10Lも飲む豚はもちろんのこと、鶏も羊も山羊も実はけっこうな量の水を飲みます。

厳密には食べ物や気候、湿度などで飲む量は変わるのですが、「飲まない」ということはまずありません。





豚の飲み水問題



豚は、非常にたくさんの水を必要とするいきものです。
なので、飲み水問題の大きな部分は豚が占めています。


豚が飲む水、使う水


豚は基本的には穀類、木の実、青草などを好み、大概のものは食べちゃう雑食ですが、その分いろいろな老廃物をドバーッと大量の水で洗い流してやらねばなりません。


さらに夏になると、泥浴びの必要が出てきます。
豚は汗腺がないので、汗という形で体を冷やすことができません。
なので、夏場は泥で体を覆うことで体温を調節します。
さらに冷たい泥風呂に浸かって体を冷やします。


余談ですが、黒豚なだけに夏はかなり暑くなってしまうんではないかと思っています。
その分、冬は日なたに出るだけで体がポカポカに温まるようなんですがね。
朝日がのぼる頃、皆じっと立って体に日光を集めている光景がよくみられます。


泥浴び用にも水を確保しておかないと、水桶に入るという暴挙に出ます。
もしくは、ひっくり返してそこに穴を掘りプールを作ります。
問題解決能力が著しく高いのも豚の素晴らしいところですが、飲み水が汚れるのはよろしくありません。


暑いとこうなります。


どの養豚農家もおそらく同じ問題と戦い続けてきたためか、いろいろな機器メーカーからはニップル(口で咥えて飲むタイプ)やそれに小さな水受けがついたものなどさまざまな工夫を凝らした給水器が販売されています。

それも、強固な素材でできています。


いろいろ試しました。
どれも破壊されました。
瞬時に。


それらは基本的に屋内で使用することを前提に設計されているので、年中放牧されて若干野性化しているCURLY FLATS FARMの黒豚たちにはとうてい歯が立たないものだったのです。
(おそらく生まれた時から慣れさせる必要があるんだろうと思います。)


豚は常にその鼻をきれいに保っておく必要があるようで、食事や土堀りのあとには必ず水で鼻を洗います。
中には口をゆすぐ豚もいます。

なので、水はかならず汚れるのです。


今のところの給水方法


というわけで、ここでは実に原始的ながら水飲み用のゴム製タライ(水桶)に車に乗せたタンクからひとつひとつ給水しています。朝晩の餌やりの際に汚れた水を取り替えます。


夏場は、場内の井戸からポンプで組み上げた水を放牧地に届くようにしてあります。
それぞれの敷地に蛇口があって洗い物や給水ができるようになっているんで便利ですね。

泥浴び用のプールに水を入れてやることもできます。


極寒の地となる冬は地獄です。

時には10cmを超える厚さに張った氷を割りながら一つ一つ新しい水を入れることになります。

ゴム製のハンマーでボコボコに叩きのめす関係で、ゴム製のタライは大変重宝するものなのです。

さらに水が足りない、水風呂に入りたいなど様々な理由で豚は水桶に体当たりしたり跳ね飛ばしたり、踏んだり蹴ったりするので、ゴム製は最適です。

当初使っていた牧場用の強化プラスチックの水桶は、早々に全て破壊されてしまいました。


いずれにしても、食事同様に大事な仕事ですが、なかなか大変なものです。


遠い放牧地でもいつもきれいな水を、飲みたい時に十分な量を供給するのが究極の理想ですが、冬季間も含めて常に稼働するためには相当大規模な設備が必要になるだろうと思います。


今のところは「できるだけ」で、なんとか朝晩はきれいな水を飲めるようにしています。


まあ、言い訳ではないですが、もしニップルや小さな水受けだったら、豚本来の水の使い方ができなかった、そういう自然な行動をさせてやれなかったかもしれないな、ということも考えたりします。


ヤギ・羊の水桶問題



近い近い。


なぜそんなことを?!


ヤギ・羊は一般に乾燥に強く、飲水量が少ない印象がありましたが、どうしてどうして、チューチューどころかビュービューと音をたてて一度に大量に吸い込んで飲みます。

給水方法は豚たちとほぼ同じです。
朝晩の餌やりの際に水桶にきれいな水を入れます。


ヤギも羊も実はけっこう破壊行為が多いので、これまたゴム桶やスチール製の水桶を使っています。
それでも泥浴びをしないだけ、扱いは楽かもしれません。


もちろん彼らもきれいな水を好みます。


なのに、なのにだ。


なぜか彼らの多くが水桶にフンをするのです。

特にヤギ!
君たち!
水桶に登って上に立ち、そこでなぜフンをする?


ヤギ・羊の水は豚とはまた違う汚れ方をするのです。


それにしてもなぜ、自分たちのきれいな飲み水に敢えてフンをするのか、全くわからない。

(思い当たるとすれば、豚は排泄・寝床・食事などの場所をきっちり分けて生活するが、ヤギ・羊はそこが分かれていないのが関係しているかもしれません。)


鶏・あひる・ウサギの飲み水


近いって。


鶏もあの小さい体で、実に大量の水を飲みます。

朝には直径20cmほどの鉢皿に並々とあった水が、鶏4羽で午後にはほとんど残っていないほどです。


アヒルはもちろん、浴びるように水を飲みます。
食事も水とともにザバザバと飲み込みます。
そして、食後の水でなんと毛繕いをするなど実に有効に活用しています。
さすが水鳥。

ひとつ例外、というかいまだに掴み切れていないのが、ウサギです。
なにかで読んだものでは、ほんの1滴で1ヶ月生き延びることができる強者といっていました。

確かにふだんの飲水の量は非常に少ないように見えます。

特に青草や、生野菜があるときはそれで水分を補っているようです。
そうかと思うと、一斉に水にたかってガブガブと飲んでいたりします。


なぜそんなに詰め込むかね


鶏・ウサギの飲み水は他の大きな動物たちに比べると可愛いものです。

水飲み用の器のフチに立つので、ひっくり返したりしても、
高さや固定を工夫すれば何ともないよね。

とはいえ、ウサギと鶏、特に鶏はしょっちゅう器に土や敷き藁をびっしりつめこんでいることが多いようです。

足で地面を引っ掻き回しているうちに入ってしまうのではないかなと思いますが、「自分が飲む水でしょ?!」と思ってしまうのは、ヤギ・羊の飲み水問題同様です。

慣れてくれるかどうかもありますが、昨今の鳥インフルエンザの深刻な流行も心配なので、ニップルタイプ(くちばしで突くと水が飲める)に変更していこうかとも考えています。


が、しかし。
CURLY FLATS FARMでは鶏もウサギもマイナス30度の冬も元気に外で暮らしています。
ニップルタイプは凍るよね・・・


とにかく、どの動物にもかかせないものである以上、手間と時間はどうしてもかかってしまうのかなと割り切って、きれいな水をできるだけ保ってあげられるとこちらも気持ちが良いものです。