『ギリシア人の物語1 民主政のはじまり』の面白ポイント


はじめに

 塩野七生さんの「ギリシア人の物語1 民主政のはじまり」が面白かったので共有しようと思って書いた。全四巻らしく、本書は紀元前594~449年頃の話が書いてある。
 ちなみに私は事前知識ほぼない状態で読んだので、変なことを書いていたら教えてほしい。

滅茶苦茶ざっくりとした本書の内容

 ギリシアにはアテネとスパルタってでかい国があった。アテネは徐々に民主化していき、スパルタは憲法を制定してスパっと民主化した。
 ペルシア帝国がギリシアに2回攻め入ってきたが、主にアテネ人とスパルタ人が頑張り2回とも返り討ちにした。2回目でエーゲ海からペルシア帝国を完全に追い払ってギリシア人の海が戻ってきた。
 2回目の時の戦争の功労者(アテネ、スパルタ1人ずつ)は自国の政治家から疎まれてスパルタ人の方は処刑され、アテネ人の方はペルシアに逃げた。

 って内容を掘り下げて500ページくらい書いてある本。
ここから先は面白かった所を紹介していく。

面白ポイント

アテネは革命が起きなくても民主政になったのか!

 私は民主政を政治に参加できない人々が決起して勝ち取ったものだと想像していたが、アテネではそうではなかった。支配者層が必要に迫られて導入したのだ。自分の権力減らしても全体をよくしようとする権力者もいるらしい。
 既得権層と非既得権層の間で激しい抗争がおこっており、既得権層側が危機感を抱いたらしい。具体的な抗争の内容は書かれていなかったのでよくわからなかった。
ざっくりとした流れは以下の通りだ。
 民主政へのステップ
1.借金で奴隷に成らない・借金の減額で債務者を楽に
2.市民全員を 貴族/平民→収入別4段階 の区分に分ける
3.3段階目の収入の人も少し公務に関われるようにした
4.3.4段階目の収入の人たちの収入を底上げする国政にした
5.土地の区分を細切れにしてお金持ちの力を削ぐ
6.市民が平等に政治に参加できるように
7.貴族だけしかなれなかった役職の権力を無くす

アテネに王様がいなかった理由だとか貴族政の問題だとかは書いていなかったのでよくわからないが、不思議な国だ。

ギリシアってそんな戦争大事なんか……?

 ギリシアって国はないらしい。ギリシア語を喋る人がギリシア人。ちっちゃい国(都市国家、ポリス)がいっぱいあってみんな領土拡大したくて戦争大好き。市民は国を守る義務があるから皆軍人。
兵役が無い日本人視点で考えると中々おっかない世界だ。

 ギリシア世界観は男社会っぽいが、

男→戦争に行く→国を支えている→偉い
女→戦争に行かない→国を守ってない→偉くない

みたいな思考回路だったのではないかと予想。
男神も女神もいるのになぜ……?
オリンピックも女性は観戦できなかったらしい。

女→戦争に行かない
の部分はどうしてそう決めていたのかは謎。
男性社会っぽくなってる原因は戦争の比重がでかすぎたことだと勝手に予想している。

スパルタのエフォロス厄介すぎ

 スパルタって国は、B.C.8c頃に作られた憲法滅茶苦茶守る国。国が腐敗しないように頑張って憲法考えた人がいたみたい。
 エフォロスはスパルタ市民の中から毎年5人選ばれる行政する人たちの役職。憲法大好きっ子がなってて滅茶苦茶口うるさい。コロナ時期の自粛警察みたいなイメージを勝手に抱いている。

 スパルタは市民権持ってる層がとても少ない。スパルタ市民は皆専業戦士。商売とかしない。農業とかする人は市民権ないし、スパルタ市民が20歳になって一人前になるために一人殺されるって憲法で決まってる。おっかない。
 戦争の指揮する人(王様)と政治考える人(エフォロス5人)が完全に分かれてる。権力が集中しすぎないようにするためらしいが、意思決定がすごい遅いみたい。
 本書のスパルタ絡みの厄介事は基本エフォロスが絡んでいて嫌なイメージがついてしまった。

 ちなみにスパルタは戦争滅茶苦茶強いけどオリンピックの優勝はあんまりしてないみたい。不思議。

ペルシア帝国残念すぎん??

 当時滅茶苦茶強い国のペルシア帝国。メソポタニアとかエジプトとか飲み込んでるくらい強者。ペルシアの王様は「王たちの王」って呼ばれてたらしい。欲しい国を見つけると「土地と水」を要求して属国にする。断られると攻め滅ぼす。こんなに強者感溢れているのに、アテネに全敗。
 ギリシア連合軍が頑張ったのもわかるが……
 一回目は少ない戦力で攻めてアテネ軍一国の戦力で返り討ちにあう。ちなみにスパルタ軍はペルシア軍が引き上げてから現着したから何もしていない。
 二回目は10年後に全力で攻めたのに負けた。

 本書にはギリシア側の頑張りが沢山書かれているので、気になる方は読んでみてほしい。
ざっくり説明すると、アテネ初の平民出身の指導者が、戦争ならんやろって思ってる人たちと政治で戦いながらアテネで重視されていなかった海軍を作ってペルシアを倒す胸熱ストーリーが描かれている。

この人のおかげでギリシア悲劇できるようになったんか!

 アテネが民主政になるように頑張った人の2人目、ペイシストラトスはアテネ市民が豊かになるよう頑張った人。
この人がデュオニソスってお酒の神様を格上げして演劇の守護神にしてくれたみたい。
 一番面白い演劇を決めるお祭りの為にギリシア悲劇の戯曲が書かれていたのは知っていたが、なんでできたのかとかは全く知らなかった。
 ありがとうペイシストラトス。私はデュオニソスを勝手に崇めることにした。

おわりに

 本書はギリシアのこと何も知らなくても読めるよう地図とか図解とかがついていてとても読みやすかった。
 『Fate/Grand Order』や映画『300』のスパルタ人300人でペルシア軍と戦った話の前後の話とかも載っているので、レオニダスファンも楽しめると思う。
 興味があれば是非読んでみてほしい。


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