メディアは沈黙の艦隊
故・ジャニー喜多川ジャニーズ事務所社長の性加害、人権侵害拡大は、メディアの沈黙が背景にあったとの同事務所第三者委員会の指摘で、日本マスコミは一斉に声明などを発し、今更ながらその責任に言及している。2004年文春報道が最高裁で事実認定された時点でも、テレビは完全に無視を決めこんだ。性加害が犯罪という認識の欠如という日本のメジャーマスコミの致命的欠陥が内在する一方、ジャニーズタレントの顧客吸引力に平伏した商業主義は罪深い。国際ジャーナリズム感覚のズレも大きい。2002年、米ボストングローブは神父が長年、多数に性加害をしていた大スクープを発した。神職の絶大な信頼をテコにした人権侵害は、被害者に消し去れない苦痛をもたらす。同紙は被害者の視点で報道に踏みきった。この報道は、TBS報道特集で取り上げられたが、ジャニーズは完全黙殺された。日本の新聞、テレビには、たかが週刊誌ごときの潜在的意識が強い。雑誌が報道した内容を、海外メディアが報道し、それから雪崩れを打つパターンは多い。ジャニーズ性加害報道が広がったのも、BBCがきっかけだった。日本には本質的なジャーナリズムが育つ土壌がない、といっていいかもしれない。