戯曲「お悩み解決ノート」　５

                    関西人、ガンジー、天草でインタビュー会場をつくる。
                    天草がインタビュアーの位置に行き、関西人とガンジーは前
                    カメラマンや、記者としている。カメラのシャッター音が
                    鳴り響く。

天草 放送席、放送席、本日は話すことが苦手で有名の悠祐選手に
        来ていただきました。

悠祐 別に話すことが苦手な訳じゃ、

天草 悠祐選手それではまず、自己紹介をお願いします。

悠祐 えっと、吉原悠祐です。高校3年の17才です。

天草 17才！僕と同い年ですねー！それで？

悠祐 それで、えっとー…

天草 好きな食べ物はなんですか。

悠祐 好きな食べ物は、牛丼です。

天草 牛丼が好きなんですか？

悠祐 小さな時からよく親につれていってもらっていて、美味しいし、
         安いからです。

関西人 はい。(手をあげる)

                    天草の持っているマイクの代わりのものを関西人の前に出す。

関西人 ドライブ関西ベストコースの兄さんこと関西人です。
             いま、世の中、牛丼屋って何個かあると思うんですけど、
             どこが1番ですか。

                       天草戻る。

悠祐 あー。どこも美味しいですけど、僕の1番はすき家です。

関西人 それはなぜですか？

悠祐 それは、牛丼のトッピングがたくさんあるからです。

関西人 なるほど。それならいつもはどのようなメニューを食べてますか？

悠祐 いつもは、明太マヨチーズ牛丼です。

関西人 ありがとうございます。

天草 それでは次の質問に参りましょう。
         最近はまっていることってありますか？

悠祐 最近はまっていることは、図書館の自習室の1番窓側に座って、
        外を見下ろして「人がゴミのようだ」と心のなかで呟くことです。

天草 ここの図書館の自習室って最上階ですもんね。
        それではやっていただきましょう。

悠祐 え？

                    関西人 ガンジーがセンターに机とイスを横向きに置く。
                    悠祐を座らせる。

天草 よーい、アクション！

関西人 あー、一人で喋り続けてたら聞いてくれる人がいなくなってしもた！

ガンジー ぼくのおしゃれ用のヒョウ柄眼鏡がどっかいってしまったー！

                    関西人とガンジーは嘆き悲しむ。

                   悠祐 前を向きかっこをつけながら、

悠祐 人がごみのようだ。

関・ガ おーーー

天草 カット！

                    拍手がおこる。

ガンジー はい(手をあげる

                    天草の持っているマイクの代わりのものを
                    ガンジーの前に出す。関西人 机だけ元に戻す。

ガンジー マハトマ・ガンジーです。どうしてそんなこと思うんですか?

                   天草戻る

悠祐 僕の1度は言ってみたい台詞第2位がそれで、
         一回言ったらちょっと癖になっちゃって、

ガンジー 第1位は何ですか。

悠祐 第1位は「前の車を追ってくれ」です。

天草 かっこいいですもんね。それではやってみましょう。

                    関西人 下手前で上手を向いて片ひざになる。

天草 よーい、アクション。きゃー！ひったくりよー！

ガンジー 捕まえれるものなら捕まえてみな！

                  ガンジー 走ってきて車に乗り込み発車する。

悠祐 ヘイ！タクシー！

                  関西人 車が発進する音を口でいいながら進み、
                  イスの横で止まる。
                 悠祐車に入る音を口でいいながら、イスに座る。指を指しながら

悠祐 前の車を追ってくれ。

関西人 了解！

                    悠祐を囃し立てるように盛り上がる。
                    天草 イスを元に戻し、悠祐に立つように誘導する。
                    悠祐 照れながら立つ。

天草 とってもかっこよかったですね！
        それでは次の質問です。最近悩んでいることなどはありますか？

悠祐 悩んでいること、そうですね、やっぱり一応受験生なので、
         勉強をしないといけないんですけど、
         やり始めるまでに時間がかかること、とかですかね。

天草 あるあるですね。

関西人 はい(手をあげる) ドライブ関西ベストコースの兄さんこと
            関西人です。勉強をやりたくないなら
            やらなくてもいいと思うんですけど、
            どうしてやる気にならないことをやるんですか。

悠祐 やっぱり大学には行っておいた方がいい気がするし、
         なんか、勉強ができない自分が嫌なんですよね。

関西人 はい(手をあげる)ならなんでやらないんですか。

悠祐 やる気にならない…から、
         とか甘えだってことも分かってるんですけど、
         そんな甘えてる自分も嫌で、
         だからといって勉強がんばれる訳じゃないし…(ため息)

天草 質問を変えましょう。家族の好きなところを教えてください。

悠祐 家族か…

                  イスに立つのを辞めて座る。

悠祐 あまり仲良くないんですよね、たぶん家族全員から嫌われてるし、

関西人 そうなのか？

悠祐 たぶん、

天草 そんなことないでしょ、僕は悠祐のこと好きだよ。
         僕も牛丼好きだし。天草四郎ミュージアムの帰りに食べてきたし。

関西人 わしも好きやで。ネガティブなところはあるけど、好きやで。

悠祐 それはみんなが僕のことをよく知らないだけで、
         普段の僕とかみてたらきっと嫌いになるよ…だから言いたくないんだ。

ガンジー 私は君のこともっと知りたいよ。
                知っても嫌いにならない自信がある。

天草 僕もある

関西人 わしもある

天草 悠祐は友達いないの？

悠祐 いない訳じゃないけど、

天草 その友達は悠祐のことを好きだとおもってるんでしょ？

悠祐 どうだろう…

関西人 自分ほんまにひねくれてんな、友達なんて好きに決まってるやろ。

悠祐 僕は…学校でも青春を楽しんでいる一軍とはほど遠い五軍だし、
         部活もやってなければ、勉強ができるわけでもない。
         友達として好きになる要素なんてなに一つない。

ガンジー やっぱり。周りの人が君を嫌っているんじゃなくて、
                君自信が君を嫌ってるんじゃない？

天草 そうだよ。周りの人は君をそんな風に思ってない。

ガンジー そんなに自分を責めないであげて。
                 君は君自身に暴力を振るっていることになってるよ。

悠祐 暴力なんてそんなこと…

関西人 とにかくわしらに全部話してみてや。
             嫌われるかどうかなんてやってみないと分からへんやろ！

悠祐 うーん…

関西人 なんやねんまだ怖いんか？わしらなんて、今しか会わへんねんから
             嫌われてもいいやろ。

悠祐 なに話したらいい？

                    天草、関西人、ガンジー、もとの
                    ヒーローインタビューの位置に戻る。

天草 放送席、放送席、またまた来ていただきました。悠祐選手です。
        よろしくお願いします。

悠祐 お願いします。

天草 何か質問がある方はいらっしゃいますか。

関西人 はい(手をあげる) ドライブ関西ベストコースの兄さんこと
             関西人です。家族構成を教えてください。

悠祐 家族構成はお母さんとお父さんと僕と妹がいます。

関西人 妹さんとは仲良しですか。

悠祐 妹とは仲良いです。

ガンジー はい(手をあげる)マハトマ・ガンジーです。
                妹さんの好きなところはどこですか。

悠祐 案外僕を頼ってくれるんですよね。勉強教えてとか、
         好きな人の落とし方とか。

ガンジー 兄弟で恋バナするんですか？！

悠祐 まあ、

天草 すごい頼りにされてますね。他に質問のある方いらっしゃいますか。

関西人 はい(手をあげる)好きな教科は何ですか。

悠祐 好きな教科は…とくにありません

関西人 なら嫌いな教科は

悠祐 数学です。

関西人 なるほど。

天草 次の質問にうつります。あなたが長年悩んできた悩みはありますか。

                   関西人 天草 ガンジーは悠祐に前のめりに注目する。

悠祐 長年悩んできた悩みは……

関・ガ・天 (一歩近づく)うん…

悠祐 悩みは…

関・ガ・天 (もう一歩近づく)うん！

悠祐 僕の悩みは…

関・ガ・天 (もう一歩近づく)いけ！

                   悠祐 机の上に立ち、大きな声で

悠祐 自分自身に対する理想が高過ぎて、

現実の自分を好きになれないことです。

                   関西人、ガンジー、これまで以上の盛り上りを見せる。

ガンジー 言えたやん！

天草 スゴーい！

関西人 僕らのお役目はここまでやな。

ガンジー そうやな。

天草 そうですね。

悠祐 え？

関西人 元気にがんばるんやで。

ガンジー あまり自分を責めすぎないようにね。

天草 応援してますよ。

                    関西人、ガンジー、天草去る。
                    追いかけようとするが、出遅れる。
                    悠祐 3人が去った方向を見てる。

悠祐 消えた。あれ？さっきまでそこにいたのに、
         そっちにドアとか窓もないのに、どういうこと？
　　  お役目？どういうこと？何から何まで分からなかったな。
          結局僕に必要なものって何なんやろ？
          ヒーローインタビュー？ん？本当にどういうこと？

                    下手から狼少年が走り込んで来る