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掌編小説「コピーラボラトリー」

平凡な毎日なんてつまらない
大人の言うことなんて
つまらない
でも僕たちは子供だから
子供だけだったらなにもできないから
言うことを聞かないといけない

そんな僕たちが大人の目から解放される時間
自由になる時間がある
それは夜
夜になったら僕たちはいつもの駐車場に集まる
この時間だけ唯一本当にやりたいことをやれる
それが許される
だから今日もいつも通り親の目を盗んで家をでる

だけど、今日はいつも通り駐車場で遊ぶことができなかった
いつものあの場所になにやら大きな建物があった

「なにこれ」
「さあ、」
「なんか、あれみたい。なんだっけ、いろんなものがあって、みて回るやつ」
「図書館」
「違う」
「博物館」
「それ」
「あー確かに、言われてみればそう見えるかも」
「こんなのあったっけ?」
「ここっていつも俺たちが集まってたあの駐車場があった場所だよな、」
「うん、そのはず」
「開いてるぞ」

みんながその立派な建物に見惚れている間に瑛太はもう玄関まで行き、ドアまで開けていた

「おいやめとけよ、バレたら叱られるぞ」

僕はそう言って動かなかったが、他のみんなは笑顔で玄関のところまで小走りで行ってしまった。そして、挙げ句の果てに中に入っていった。僕は怒られるのが嫌だったこともあったが、こんな立派な博物館に夜に入るなんて考えたくもなかった。
別に怖いとかじゃないけど、

一人残されてしまった僕は仕方なくみんなの後に続いて立派な建物に入っていった。

やっぱりこの建物は博物館だったらしい。
そこには動物や植物、野菜などが展示されていた。

「うわ、スッゲー 牛だ」
「これ生きてないよね」
「生きてないでしょ」
「いや、多分生きてる、今お腹動いた」
「ウソ、本当に?」
「じゃあ、あっちの羊も生きてるのかな、」

「これなんて花だっけ」
「なんだっけな、」
「この花がいっぱい出てくる絵本あったよね」
「えーっと、ヒガンバナとかじゃなかったっけ」
「あー多分そう。」
「あっちにはりんごの木があるよ」
「その近くにあるのはじゃがいも?
じゃがいもって土の中にできるよね、」
「多分、」
「じゃあ、多分じゃがいも」

みんなそれぞれの展示物を見ていたその時、

「うわ!」

奥の方から瑛太の叫び声が聞こえた。
みんな奥まで行ってみると瑛太の前には、白い布と瑛太そっくりの人形があった。
きっとその人形に、落ちてる白い布が被せられていたんだろう。
顔は瑛太そっくりで白い作業服をきていた。
瑛太の人形の周りには六体白い布を被った何かがあった。
みんなはそれぞれに白い布をめくった。

そこには僕たちにそっくりの人形があった。
全部白い作業服を着ていた。

僕も含めてみんな声が出なかった。

よくみると今の僕とは少し違うことに気がついた。

「一年前の俺?」

そう言ったのは瑛太だった。

一年前の僕の姿が人形になっているみたいだ。
なんで?

その人形たちは無表情で一点を見つめているからか、とてもきみが悪かった。

「本当だ一年前の自分にそっくり」
「なんでこんなものがあるの?」
「なんか怖いんだけど」
「僕たちのファンがいるとか?」

少し笑いが起きて空気が和んだ瞬間

ドン

人形がある奥の壁から大きな音がした。

ドン ドンドン ドンドン ドン ドンドンドン

何人かが壁に体当たりしているような音だった。
さっきの笑いで少し和んだ空気もなくなり、全員が壁に釘付けになった。

ドンドンドンドンドンドン ドン ドンドン ドン

今にも壁が崩れてしまいだ。
逃げた方がいい。
と分かってはいるけど、うまく体が動かない。
みんなも同じなようだ。

ドン

壁にヒビが入った

ドン

ヒビが大きくなって

ドン

増えて

ドン

ついに壁に穴があいた

ドン

壁の奥から現れたのは、

僕たちと同じ顔を持った人間だった。


それからの記憶はあまりない。
みんな必死にそれぞれの家にひたすら走ったことだけは覚えてる。
追いかけてきてるのかさえも確認せずに、
前だけ見てひたすらに走った。

そんなことがあってから僕たちは夜に集まることもやめた。
そして、あの博物館を見たのは僕たち以外いなかった。



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