映画に救われるって何？？【映画大好きポンポさん】を例に
一 はじめに
この記事を書くにあたって、私はかなり苦しみ悩んだ。なぜなら、他のレビューや感想を見てしまったからだ。私はあまのじゃくな性格なので、人と同じことをするのが嫌いだ。そんな私が今回の作品の記事を先に見てしまうと彼らが書いていたこと以外のことしか書きたくなくなってしまう。なので今回は映画内映画だとか、演出や編集が実写映画みたいだとか、90分だとかの話はしない。私のあいまいになっている感情を分析し、言語化することで、私にしか書けない傑作の感想にしたいと思う。
二 映画に救われるって何？？
私はこの映画を見て救われた気持ちになった。救われて心が軽くなったのだ。ただ、なぜ救われたのかうまく言葉にすることができなかった。感動するシーンを観たからか？では、なぜ感動するシーンは救いになるのだろう？感動する時としない時の違いはなんなのか？っとこのように問いを立て、思考を巡らせた。作中でも私が思った問いに近いような問題に直面している。そのため、何度も見直すことでヒントをもらい、ようやく形となる答えが出た。
三 3通りの救われ方
結論から言うと、3通りの救われ方がある。1つ目は、辛い状況で苦しんでいる気持ちを共感してくれるという救われ方。2つ目は、何かを努力しなければならない状況で、くじけそうになっている気持ちに勇気や希望を与えてくれるという救われ方。3つ目は、このままではダメだと思っている状況で、でもどうすれば良いかわからないという気持ちに、気づきを与えてくれるという救われ方。まとめると、私たちは映画から共感や勇気や気づきをもらうことで救われている。
四 救われるためのトリガー
私たちはただ共感などをもらっただけで救われるような安い心は持っていない。しかし、悔しいが【映画大好きポンポさん】という映画に救われてしまった。それはなぜなのかというと、自身の過去の記憶が蘇ってしまうほどの葛藤を観せられるからだ。作中ではさまざまなものを切り捨てていくシーンがそのひとつにあたる。私たちは何かを選び、他のものを切り捨ててきた。そして、最後まで残ったものまで捨ててしまわないように必死になって足掻いてきた。だから、その瞬間を観ると私たちは切り捨ててきた過去を思い出さずにはいられなくなるのだ。それが救われるためのトリガーとなる。
五 辛い感情の共感
トリガーによって心の扉を開いた私たちは、辛かった時の感情を思い出す。しかし、ただの辛い感情ではない。誰にも共感されずに現在もたまに思い出してしまうような感情である。『そうじゃない！なんで誰もわかってくれないんだ！』と言って、悩んだ日々。最終的には1人で抱え込むしかないと悟り、孤独に苦しんだあの感情だ。映画はまず、その感情を引っ張り出してくる。次に、その渦巻く感情を視覚や聴覚としてありありと表現してくれる。その時私たちは、目の前の情景とあの時の感情を重ねる。すると誰もわかってくれないと思っていた感情に共感してくれたような気持ちになるのだ。そうして、私たちは救われる。
六 挫けそうな気持ちに勇気を
私たちは夢や目標を持つ。そして、そのために努力をする。しかし、私たちは知っている、世界は私に興味がないということを。自分は主人公だと思っていたのに何者でもない。理想とする場所はあんなにも輝いて見えるのに、私が進む道は真っ暗で何も見えない。あの理想の場所に向かっているのかすらもわからない。こんな辛い思いをするなら、いっそのこと夢なんて持つんじゃなかった。
そんな思いに映画は答える。まず、一生懸命にやっているのに思うように結果が出ないキャラが出ることで、私たちはそのキャラに自分を重ねる。そして、結果が出なくても諦めない姿を見て、私たちは勇気をもらう。最終的には、夢が叶う姿を見て、私たちは自分の努力する先にも必ず希望があると信じこむことができる。そうして私たちは救われる。
七 言い表せない閉塞感に気づきを
私たちは、漠然と『何かが違う』と考える時がある。うまく表現はできないんだけど何か違う、何か物足りない。何か大事なことを忘れている気がする。思い出せないけど、確かに持っていたものだ。なくしてしまったのか、捨ててしまったのか、それすらもわからないが、とにかくもう一度あれが私には必要なんだ。そんな思いを胸に、ある時はすがるように、ある時は探すように、ある時は無意識に、私たちは映画を観る。そして、唐突にそれが来て、私たちは気づくのだ。最後のピースがはまるように、全身が痺れるように、ずっと忘れてたものをようやく思い出すように、私たちはその気づきに出会う。そうして私たちは救われる。
八 最後に
私たちは映画に救われた後どうするのか？結局、救われたとて現実は変わらない。私たちは次の救いを求め、また別の救いを探し続ける。はたしてこのループに救いはあるのだろうか。
画像出典
劇場アニメ『映画大好きポンポさん』公式サイト https://pompo-the-cinephile.com
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