初めて「バー」と「あちらのお客様からです」
一昨日立てた予定、「服、髪、寿司」のうち「服、髪」をクリアした。服というのがやはり分からないけれど多少マシになったようにも思える。試着をしてサイズ感を確かめてから買うようになったのであるー。僕の気持ちがわかる人がいるかしら、服屋の中にいると”うずうず”が止まらない。ずっと震え動いているみたいな感じ。だから早く出なければという気持ちになる。昨日はしかし落ち着いて買い物ができた。なんでだろうねぇ。そして次は理髪店に行った。全部近場で済ませた。お店の前についてようやく「バーバーショップ」の文字に気づく。よくわかんないけど入った。「バーバー」が男の美容院ってのはなんとなく知ってたけど実際何が違うのかとかよく分からない。で、僕坊主。切るところはないんだね。だから僕「まちがえた」と思った。でも襟と横が中途半端になってたので
「伸ばし途中です、いい感じにしてください」と頼んだ。
「刈りますか?」
「んー、いえ、ナチュラルな感じでお願い」
理髪師は分かりましたと言って鋏を手に取った。横を綺麗に整えてくれている途中、僕は自分の言ったことが不安というか、何を言ったのか忘れていてもういちど確認した。
「あれ、僕なんて言ってたっけ。刈るんだっけ」
「あ、え、いえ、ナチュラルな感じでとおっしゃっていましたよ」
「あぁ分かりました大丈夫です。すみませんぼーっとしてて」
「はい^^」
やれやれだぜ。で、前の洗面台でお湯をだし始めたから「シャンプーか、椅子を反転させるのかな」と思ってたら理髪師さんが”こちらへ”みたいなジェスチャーをやってるんです。椅子に座ってる僕、前にある洗面台。初めてだから分かんないやと思って。「んっ?」と首を傾げたら「あっ前へ^^」と言われて合点承知ィ。前かがみになるんだ。座ったままごめんなさいのポーズだ。おもしろい~。シャワーを終えた後はなんと顔も剃ってくれるんだね。湯気が立ったシェービングフォームを筆みたいなので解いて、顔に塗ってきた。えらから首のほうまでやるんでこしょばゆい。三回は笑ってしまった。最初頑張って耐えてたんだけど、こしょこしょには昔から敏感なのだ。思い出すだけで感覚がよみがえってくる。。。
そんなこんなでスッキリして外に出た。夜ご飯食べて帰ろうと思い立って、寿司のこと思い出して、最近できた少し高い寿司屋に入った。「おぉ板前ぇ・・・」テンションが上がった。気概のあるご老人様達が「いらっしゃいませぇ!」で迎えてくれた。座ってメニューをジィーっとみる。こういうのはゆっくり一個一個注文していくのがいいのだろうかね。「○○と○○!生ビール!」みたいな?僕は前にいる板前ェが気になって、ずっとこちらを見ているような気さえして落ち着いて考えることができなかった。とりあえず目立ったのを注文した。一人前の、お寿司が何巻か乗ったやつ。全体のサイズ的には三段階あって、一番大きいのを頼んだ。それと生ビール。お通しのひじきが印象的であった。実家でしか食べないから…ひじき。懐かしい!のうまさがある。「へいおまちぃ!」寿司がきた。おいしいおいしい。お魚が久しい。嚙み応えがある。魚が跳ね返してくる!えび!プリプリ!ビール!んまい!もう一杯!ここらへんで気づいたのだけど、他の人はゆっくり談笑しながら食べている。僕、もう寿司食べちゃったあとだしお腹一杯だし(ほとんどビールで)お会計をした。僕が一番遅く来て一番早く出たようにも思う。外の空気が気持ちいい。車のライトに照らされて雨が降っていることにも気づく。尚気持ちがよかった。何がいいって人の目を気にしないで済んでいる。お酒がうまく回ると自分の下手なところがいい具合に削られる。毎日こうやって人目を気にせずいられたらいいなぁと思った。帰ろうかと思ったけど、まだ早いなと思った。ここで初のバーに向かうのであった・・・。
駅前の裏路地にある薄暗くアンティークな感じのバー。木目調に暖色ライトが照らされていかにもな雰囲気だった。見るに10席ほどの小さな空間。僕が来た時には3人の渋いおじ客と女性マスターが競馬の話をしていた。キャラじゃないねぇと思いながら席に座った。みんなこちらをチラっと見たような気がした。メニューを開いて見るけどさっぱり。とりあえず分かるのから注文した。「スクリュードライバーで(スクリュードライバーってなんだっけ)」。僕は一目で、あぁやっぱマスターって気配りがうまいんだなと思った。談笑しながら常に全体にオーラを張り巡らせているのが感じ取れる。オレンジを入れてた。思い出した。これカクテルってやつだ。飲んでみる。おいしい。ゆっくりと飲む。時間を味わった。外にでて一服。「ふぅ幸せ~」追加で何か飲みますかと聞かれた。ワインの欄を見てみる。かっこいい名前のものにしよう。
「ハーパー」
「飲み方はどうされます?」
目線を上げる。考えている。(なにがあったっけかぁ)
「水割り、ソーダ割り、ロックがあるよ」
「ロック」
そう言うと向かいの黒スーツ渋おじのほうから「おぉ」が聞こえてきた。うお、アルコールを感じるぜ。うまい。競馬の話やら愛知の話やらが聞こえてくる。途中何人か入って来たりもした。マスターがこちらに話しかけてきた。(お、やっぱり話しかけてくるよねぇ)と思いながらも酔ってるため何も怖くなかった。どんとこいのポーズだ。
「こちらに来るのは初めてですか?」
「はい」
と、渋おじが「若い子が入ってくるのはうれしいもんだ」
「ほんとそうですよね、出身はどちらですか?」
「愛知だ」
おぉぉとすでに満席になっている店内で響いた。ちょうど愛知の話で盛り上がっていたからだろう。会話ってこう広がるのかと思った。常連さんがほとんどのようで、僕より年下はもちろんいない。面白いなぁと思った。
「どちらの市に?」
「名古屋市ですぇ」
と、向かいの役所勤めのお姉さんが「名古屋市出身なのに愛知と言うの好感持てるわぁ」
「ほんとですねぇ、私この前ジブリパーク行きましたよ!」
「うへぇそうですか^!」
また一服。この時間がないと今の僕でも刺激が強すぎるのだ。至極外向的な空間だ。新しいことばかりでとても”新鮮”という字が似合う。楽しい、面白い。もう立ち飲みも何人かいた。「コロンっ」と氷が溶けてぶつかる音がしてまた戻った。
「どうしてこちらへ来られたんですか?」
「なんとなく」
肩を上げ、下唇をかぶせ、分かりやすく「なんとなく」の表情をする。何か理由を述べたほうがいいんだろうけれど、でも本当になんとなくなんだから仕方ないかと思った。他にもどうしてこの市に住んだのといった質問も、「なんとなく」と答える。適当に歩いて、たまたまここにたどり着いて、ここいいなって思ったんです。と付け加える。こちらで発した球はあちらの壁で何バウンドかしてまた帰ってくる様子。
「えぇ~!○○さんは絶対そんなこと真似できませんよね」
「んいやもう絶対全部調べまくっちゃいます」
「直感型だなぁ」
そうしていると、先ほどの黒スーツ渋おじがこちらを向いて「一杯飲める?」と聞いてきた。「飲める」と返す。マスターがにっこり笑うのを感じた。
「じゃあ、同じのを」ーFUJIのロックだ
「あちらのお客様からです」
受け取って、黒スーツ渋おじとエア乾杯をする、飲む。ああ、いいねぇ。
「うまい」
「素質ありますねぇだいぶ」とマスター。
すごく楽しかった。空間が面白ければもう満足なんだ。それぞれ違う生活を歩んで、ここでであって、同じものを飲んでおしゃべりして。僕はほとんど喋らないでその空間にいるだけで幸せ顔だったと思う。そういえばパピーもこんな顔してたなぁ。黒スーツ渋おじが会計をして、僕に「またね」と言う。僕は手を差し出した、握手をした。顔見るのが恥ずかしくて、にっこり笑うと同時に目をつぶる。人に「ありがとう」と言うことはできないけど握手とハグならできまっせ。それで全部伝わるよね。
「僕もお会計で」
ふう飲んだ。雨が顔に当たる。23時か。ちょっとだけ頭が痛い。この前公園に植えた花の横に座る。ぐらぁ~っとする。帰る。顔洗って、歯磨きして、寝転ぶ。美人のお姉さんとも話せたし、最高だったぜ~^
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