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不登校の数は認知件数? 

先日(2024年10月31日)、文科省からいわゆる「問題行動等調査」の結果が発表されました。
不登校児童生徒数は11年連続最多を更新し、約34万人に達したそうです。
いったいどこまで増えるのでしょうか。
全国の児童生徒数が前年度に比べて12万840人も減っていることを考えれば、この増え方は尋常ではありません。

文科省が集計した不登校の数は、認知件数でカウントされるいじめの件数とは違い、不登校は「年間30日以上欠席」という基準がはっきりしているので、文科省から出される数値は一定の信頼性があるはずです。
ところが、実際はそうとも言い切れないのです。

この点について、熊本市教育長の遠藤氏は、小学校の病欠児童生徒数が前年度比81.2%増であることなどを踏まえて、次のように述べています。

「(長欠児童生徒のうち)何%を「不登校」として認知しているかは、自治体によって大きく異なる(これを不登校の「認知率」と名付ける)。政令市で最も認知率が高いのは、(中略)B市で、96.9%である。この市ではほぼ「長期欠席=不登校」という意識なのだろう。「病気」や「その他」という認知は極めて少ない。一方で、政令市で最も低いC市の認知率は、53.1%である。この市では、長期欠席者のうち、約半数は「不登校」と認知されていないことになる。「23年度、全国の小中学校の長期欠席者は49万3440人であった。仮に全国の自治体がB市と同様の認知率だとした場合、全国の不登校数は、約47万8000人となる。一方で、C市の認知率で計算するならば、約26万2000人となる。ここから分かるように、34万人という不登校数は、各自治体がバラバラに認知したものを足し合わせた数字に過ぎない。」

遠藤洋路「不登校34万人は発生件数ではなく、認知件数である」
2024年11月21日付教育新聞デジタル(引用文中の下線は引用者による)

ここで重要なのは「病気である」として不登校者数にカウントするかどうかは自治体によって大きな差があるということです。
つまり、まったく同じ状態であっても、ある自治体では不登校となり、ある自治体では病欠になるのです。
最近では、起立性調節障害という病名が広く知られるようになりましたが、その子どもたちがすべて病欠扱いされたとしても、病欠児童が約82%も増えるとは思えません。
おそらく、欠席理由が「頭が痛い」とか「お腹が痛い」という子どもについても病欠として扱っている自治体があるのではないかと思います(あくまでも私の推測ですが)。

ともあれ、遠藤教育長が指摘されているように、最悪の場合、不登校児童生徒数は約48万人いる可能性があるのです。
令和5年度の児童生徒の総数は約930万人ですから、もし全国の不登校者数が48万人ならば全体の5%を越えることになります(前出の文科省の集計では3.72%)。 

なぜ、こんなに増え続けているのでしょうか。

私は、不登校は、すでに個人の問題を超えた社会「現象」であり、学校の「制度疲労」が不登校を生み出す最大の要因だと考えています。
バブル崩壊後、明確な目標を失った人びとはそれぞれに違った価値観を前面に出し、多様化に拍車がかかりました。
その変化はあまりに速く、学校制度が追いついていない状態が学校の「制度疲労」です。

学校がすべての子どもたちにとって魅力あるものとなるためには、一日でも早く今の制度を抜本的に見直す必要があります。

私は、「制度疲労」だから不登校が増えても仕方がないと言いたいのではありません。
むしろ、現行の制度の中でどうすれば「制度疲労」に対抗できるかを共に考える仲間(子どもや保護者を含む)を増やすことが重要です。


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