見出し画像

映画「ルックバック」の感想と考察

 この文章は前半(感想)と後半(考察)に分かれており、後半(考察)にはネタバレが含まれます。

〈感想〉
 この作品は、ストーリーよりも描画に力を入れていると感じました。また、今まで見た映画の中で最も面白いと思いました。ただし、意図を掴み取ることが難しいため「よく分からない」と感じた方も多いでしょう。また、上映中に聞こえる笑い声や、上映後の話し声がとても不快に感じました。「もっと藤本タツキ先生の素晴らしさを分かってくれる舞台があるのではないか」と感じ、とても悲しくなったという点でも、号泣必須の素晴らしい作品です。ぜひ、描写や、ストーリーの意図に耳を傾けながら楽しんでみてください。

勿論他の方の感性を否定するつもりや「私は君たちとは違う」みたいなダサくて無知で厨二病的な意図は全くありません。不快に感じられたら申し訳ありません。

ここからはネタバレを含みます。

〈考察〉
 冒頭から、中盤(京本が殺害されるまで)までは、現実(そもそも全てが空想なんですけどね)であり、中盤(京本が殺害されるまで)から終盤までは、藤本の空想のような気がしました。具体的には、冒頭(この文章ではAと表現します)から、京本が殺害されたことをお母さんから聞き、京本の部屋の扉の前に立っているところ(この文章ではBと表現します)までが現実であり、京本が殺害されたことをお母さんから聞き、京本の部屋の扉の前に立っているところから、机に座り、漫画を描き始めるところ(この文章ではCと表現します)までは空想であり、机に座り、漫画を描き始めるところからは現実だということです。ちなみに、さらに細かく分けると、京本の部屋の中にいる場面は現実です。Bにて、藤本が空手キックで京本を殺人犯から救うシーンや、その後、救急車にて、藤本が「最近また書き始めたよ!!」、京本の部屋から、京本が描いた4コマ漫画が滑り込んでくるなどのシーンは分かりやすく空想です。また、情緒の不安定さを見事に表現した素晴らしい描写です。そして、BからCの思い出す場面、京本の部屋に入り、京本が自分の作品を読んでくれていたこと、一時は後悔した(京本を死なせてしまったから)が、それによって生まれた自分の漫画を読み、これらのことから藤本が立ち直るシーンも自然で美しく感情を表現しており、藤本タツキさんの凄まじさを感じます。
ちなみに、京本の方言が強いことは引きこもっていたからだと考えることができます。また、Cにて、4コマ漫画の白紙の紙を机の前のガラスに貼るシーンは、過去(京本)を背負っていくみたいな意図と捉えることができます。
藤本タツキさんは、リアル(心情なども含め)に描くことがすごく上手いと感じました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?