第138話 『4/8woman写真展』ウラ話〜西田幸樹とワタシの官能小説?
西田幸樹のエロの好み
———そうだ、西田幸樹で官能小説を書かせてもらおう。
この写真展の写真購入者特典として、『アナタと藤かんなの官能小説』をやっていた。購入者と私が10分間の打ち合わせをして、その情報から妄想で短編の小説を書くという企画だ。
西田幸樹はこの写真展を創った写真家。彼をモデルに書かない理由はない。
「僕のエロの好み?」
西田さんは、私の官能小説に巻き込まれることに全く抵抗せず、ノリノリで話し始めた。
「好きなのはね・・・・・・スカートの短い女子高校生のチャリンコ立ちこぎ」
良いですねえ。
「あと、ブラウスを着た巨乳OLがジャケットを羽織る時の仕草」
胸を張ってブラウスの胸元がピーンとなるのが好きとのこと。
「それと、ブラのサイズが合ってなくて、食い込んでるのが響いてる人」
ボンレスハムのようになっている脇下が良いらしい。
「チャリンコ乗ってる時に、背中を丸めるじゃん。あの皮膚が見える感じも、大好物」
チャリンコ好きやな。
さて、これをどう小説にしよう・・・・・・
西田幸樹とエッチなコトをいたしている。何も浮かんでこない。手を繋いでいる、デートをしている。それすらも浮かんでこない・・・・・・
「西田さんにはヌードを撮ってもらってるけれども、男女のどうこうなるっていうイメージが、正直、全然浮かんでこないです」
「そうなんだよ!!!」
西田さんは珍しく声を張った。
「エロというより芸術」と言われる理由
「それが僕に足らないとこかなって思ってるんですよ。撮る時もついついお医者さんみたいな心境で接するから」
写真界の巨匠とされる西田幸樹は、まだ自分の伸び代を見据えていた。
「女の人がどう見えればエロく見えるかっていうのは分かるわけよ。画作りはできるんですけど、それから先に踏み込むような、もう一個向こうの世界に、どうしたら飛び込めるのかなって、思ってる」
それはずっと若い頃から感じていた課題でもあるらしい。
「撮っていて、この人とセックスしたいなぁ、って思ったことはないんですか?」
「たま〜にある」
たまに?
「うん。ほんとにたまに。ただ自分の脳の中ですごいブロックしてる。だからお医者さんみたいな心境」
西田幸樹の写真、『8woman』の写真展を見た人たちは「圧巻ですね」「エロというより芸術ですね」と言う。その理由はここにあるのかもしれない。
「エロは否定してないけど、品は残したいなと思ってる」
彼は撮る時の心境を語り続ける。
「自分でエロくないなと思ってるんだけど、エロく見えるように撮ろうとしてる。ただちょっと品が出すぎる。良い意味でじゃなくて、悪い意味で品がありすぎる」
私のファースト写真集『白鳥、翔ぶ』(徳間書店)も西田幸樹に撮ってもらった。それを、初の拙著『はだかの白鳥』(飛鳥新社)の帯を書いてくれた、百田尚樹さんに見てもらったら、
「ほえ〜綺麗やなぁ〜。えっらい格好やなぁ! でもこれどこで抜くんやろね」
と感想をくれた。 大ベストセラー作家・放送作家であるエンタメ界の巨匠からしても、西田幸樹の写真は「エロ<品」だったようだ。
西田幸樹の妄想劇場は「戦時中」
「西田さんはセックスは好きなんですか?」
「うん、好きですよ」
ここからは西田幸樹の妄想劇場。
「例えばさ、兄嫁が旦那の弟と・・・・・・ってのは、エロいなぁと思っちゃうよね」
戦時中、田舎の家。兄夫婦と10代の義弟が一緒に暮らしている。兄はすでに戦争に行っており、義弟にも招集礼状が来る。
嫁は悲嘆にくれる。旦那は生きて帰ってくるか分からないし、義弟もこのまま死んでしまうかもしれない。
どうにもできない悲しみを紛らすために、義弟と超えてはいけない一線を超えてしまう。
「義弟はまだ女を知らなくて、ピュアだから、もう一瞬でいっちゃうわけよ」
西田さんは男子高校生のように楽しそう。
ただ、「戦時中」という設定はなぜ?
「だってさ、本当に生きて帰れないかもしれない状況だとしたら、本当にお互いつらいだろうなって思うんだよね。多分、崇高な体験なんだろうなと思う」
セックス、それは「崇高な体験」。
「義弟からしたら女性の体を見たり触ったりするのが、これが最初で最後かもしれない。自分はこれから死んでいく。そう考えたら、なんかきっと脳が爆発しそうなんだろうなと思うよ」
私が、すごいな、と感じる人はみんな、常に頭のどこかで「死」「最期」をイメージしている。先日写真展に来てくれた千原せいじさんは、「世間に迷惑かけるジジイになりたくないから、65歳で免許返納ってゴールテープ引いた」と言っていた。エイトマン社長は「AVやっても終わりちゃうで。来世も来来世もあるんや」と、「死」の先まで考えている。
「旦那が戦争で死んで、義弟と結婚したって人の話、聞いたことあるんだよ。そういう人ってたくさんいたと思うんだよね・・・・・・」
西田幸樹は妄想劇場でもエロより品、いや、情緒が出すぎていた。
それはそうと、西田幸樹との官能小説。
・・・・・・もうちょっと私の中で熟成させてから書こうと思う。