最速で振り返る東大ロー入試 刑事系

初めに、こういう感じの文章を書かないので、何から書いたらいいか若干戸惑っておりますが、色々な方がnoteで創作活動をしているので、自分もそれに触発されてこのnoteを書くことにしてみました。パッチールと申します。至る所で名前を間違えられがちですが、ポケモンに出てくるアイツです。

 自己紹介もそこそこにして、本日11/16に行われた東大ローの入試問題について、自己の出来も含めて振り返っていこうと思います。まず刑事系から。

※追記 2024/11/18
問題文の公開が著作権的にマズそうなので、削除しました。

最初に問題文を読んだ時の思考

・刑法は住居侵入、窃盗、具体的事実の錯誤、不能犯、未遂犯の実行の着手、共同正犯の要件あたりかな。
・刑法はそんなに難しくなさそうなので、みんなある程度書けてそう。
・刑訴は無令状捜索・差押か。
・「逮捕の現場」かなぁ。車に乗り込もうとしていた、ってのが悩ましいポイントだな。
・刑訴の最後は何だ、関連性の要件が緩和されるやつか(←大きな間違い)

大まかな答案構成

第1 設問1(設問1では法令名「刑法」省略)
1 Yの罪責
⑴ B宅に侵入した行為について住居侵入罪(130条)の成否
ア B宅は起臥侵食に日常利用されており「人の住居」に該当
  同条の保護法益は、管理権者が誰を住居に入れるかを決める自由
 →窃盗目的での立ち入りを容認しないのが通常の意思であるといえる
 →「正当な理由」がないのに「侵入」したといる
イ YはA宅に侵入することについて認識・認容しており故意あり
  しかし、実際にはB宅に侵入したので、故意が阻却されないか
 →具体的事実の錯誤
 →故意を阻却せず
ウ 住居侵入罪成立、後述のようにXと共同正犯
⑵ 棚を開けた行為について窃盗未遂罪(235条、242条)の成否
ア 不能犯にならないか
 →未遂犯と不能犯の区別は、一般人が認識し得た事情及び行為者が特に認 
  識していた事情を基礎として、一般人の危機感を基準に判断
 →棚の中に金目のものがないことは一般人も認識し得ないし、Yも認識し
  ていないので、基礎とすることできない
 →棚の中などにへそくりと称して金品を入れる人が多くいることは広く知
  られているので、一般人の危機感からすれば、棚を開ける行為には窃盗
  の結果発生の危険性がある
 →不能犯にならない
イ 「実行に着手」は構成要件的結果発生の現実的危険が生じ、実行行為に
  密接する行為が開始された時点で認められる
 →B宅には誰もいないので、金品があった場合に占有を確保できる可能性
  は高い(ここは法益侵害B宅が不在で法益侵害が生じる可能性が高い、
  みたいなこと書いた)。また、棚を開ける行為は占有を取得するのに必
  要不可欠
 →「実行に着手」した
 →金目のものは何もなかったので、「これを遂げなかった」
ウ 具体的事実の錯誤、故意阻却なし
エ 窃盗罪成立、Xと共同正犯
2 Xの罪責
⑴ 共謀共同正犯の要件は①共謀、②共謀に基づく実行行為、③正犯意思である。
⑵ Xは「Aの家の場所とスムーズに入る方法を教えてあげる代わりに、500
 万円は折半にしよう」と持ち掛け、Yは引き受けることを約束した。した
 がってA宅への住居侵入および窃盗について共謀が成立した(①充足)。
 (ここは悩みどころを示すべきだったが、流石に時間なかった)
  共謀に基づく実行行為と言えるかは、共謀の危険の現実化の範囲内か否
 かによって判断する。確かに、Xが伝えた侵入方法は用いられていない
 し、B宅への侵入方法はYが自力で発見している。しかし、侵入窃盗という
 行為態様が共通している、時間的に近接していること、A宅とB宅が距離的
 に近接しており、客体に共通性があることからすれば、共謀の危険の現実
 化の範囲内であると言える。したがって、共謀に基づく実行行為といえる
 (②充足)。
  XがYにA宅への侵入窃盗を持ちかけたので、犯意を誘発している。ま
 た、窃取した500万円を折半する予定だったので、重大な利害関係を有す
 る。一方で、Xの教えた侵入方法が用いられていないので、重要な役割を
 果たしたといえないとも思える。しかし、共犯の処罰根拠は共犯者が正犯
 者を介して結果発生またはその危険を惹起し、結果に対して因果性を有す
 る点にある。そして、Xは犯意のなかったYに犯行の動機を与えた点で心理
 的因果性を与えており、その意味で重要な役割を果たしたといえる。した
 がって、正犯意思も認められる。
⑶ 共同正犯における具体的事実の錯誤も故意を阻却しない。
⑷ 住居侵入罪及び窃盗罪の共同正犯(60条)が成立する。
3 Yは住居侵入と窃盗が牽連犯、Xは住居侵入と窃盗が観念的競合として科
 刑上一罪になる。

第2 設問2(設問1では法令名「刑事訴訟法」省略)
1 本件捜索・差押は220条1項2号・3項に基づく無令状捜索・差押であり、「逮捕する場合」にあたる。
2 「逮捕の現場」といえるか。
  同条項号に基づく無令状捜索・差押が許容される根拠は、逮捕場所には
 証拠物が存在する蓋然性が高く、令状を請求すれば発付される可能性が高
 いため、令状審査を省略できる点にある。そこで、「逮捕の現場」とは、
 仮に令状を請求すれば捜索・差押ができたであろう範囲、すなわち、逮捕
 場所と同一の管理権に属する空間的範囲を意味すると解する。
 → 本件ではYが車に乗り込もうとしている時に逮捕されたため、逮捕場所
 は公道であり、Yの管理権に属する車内は捜索できないと思える。しか
 し、車に乗った後ならば車内を捜索できるのに、乗り込もうとしていると
 きであれば車内の捜索ができないのは不都合である。そして、公道は警察
 と同じ都道府県あるいは国という行政機関側の管理権に属し侵害が観念で
 きないから(あんまり覚えてない)Y車内で逮捕がなされたと見るべきで
 ある。したがって、Y車内は「逮捕の現場」にあたり、その捜索は適法で 
 ある。
  一方で、Y宅はY車内と別個の空間的範囲なのだから、「逮捕の現場」に 
 当たらない。したがって、Y宅の捜索は違法である。
3 逮捕に伴う無令状捜索・差押についても証拠物が存在する蓋然性が要求
 されるが、102条が準用され(222条1項)、被疑者の身体、物、住居につい
 ては蓋然性が推定される。そして、それを覆す事情もない。 

講評

・刑法について
 個人的な感想としては、ぼちぼちの出来だったんではないかなと思っています。書くことはかなりはっきりしていたので、どういう論点が問題になるか、という点での迷いはあまりありませんでした。
 ただ、本問では個人的な迷いポイントが3つあったように思います。1つ目は共謀の成否です。これは共謀の要件を書き終わってから気づいたのですが、あくまでXは、A宅に500万があって家の場所とスムーズに入る方法を教えてあげるよ、としか言ってないんですよね。やろうよ的なことは言ってなくて。そのため、あっさりと共謀を認定しまいましたが、「これ共謀が成立したといえるのか?教唆の余地もあるんじゃね?」と書き終わって思いました。ただ、時間的に結構厳しかったのと、後でも述べますが、流石にこの事案でXに共同正犯が成立しないってのは妥当じゃないな、という価値判断が働き、スルーすることにしました。
 2点目は共謀に基づく実行行為ですね。Yは2階の窓が開けっぱなしになっていて、塀を伝って簡単に入れることに自力で気がついているので、否定される要素になりそうですが、上で挙げたような要素からすれば、さすがに認めざるを得ないかなと思いました。
 3点目は、重要な役割の有無です。これが正直一番悩みました。Xの重要な役割を基礎づけるような要素がA宅の情報を与えたことしかなさそうだったので、否定っぽいなとも思いました。ただ、前述のように、流石に共同正犯否定の筋はなさそうだなと思っていたので、最終的に因果性を持ち出して意味のわからないロジックを作り上げました()今になって思えば、動機づけたことは犯意の誘発で考慮していますし、そもそも、正犯意思がXの正犯性を基礎づける要件なので、因果性ってあんま関係ないですよね。まぁ、現場思考の産物なのでご勘弁をw

・刑訴法について
 簡単やーんwwwとか思ってたら大間違い。普通に難しかった。
 思考的には、先に令状捜索・差押の要件から考えていきました。令状捜索の要件として①令状の有効性(特定の有無とか)、②令状の効力が対象に及んでいるか(=令状記載の捜索対象に該当すること)、③蓋然性、④必要性、の4つ、令状差押の要件として、①令状の有効性、②「差し押さえるべき物」に該当すること、別件差押に当たらないこと、④必要性、の4つと整理しています。そのため、無令状捜索だと蓋然性と関連性のみ考えていけばよくて、加えて、無令状捜索に固有の論点として「逮捕の現場」「逮捕する場合」が問題になりそうだな、という感じです(別件差押は問題ないことが自明なので省きました)。
 「逮捕する場合」は問題なく満たしそうなので、軽く流しましたが、問題は「逮捕の現場」ですね。こいつがわりと問題児だったりする。「車に乗り込もうとしたとき」っていう絶妙にややこしいタイミングで逮捕してるので、ここが問いたかったんじゃないかなと思いました。あんまり時間もなかったので、悩みを見せつつ(見せれたかは怪しいが)、なんとか車内の捜索は適法の方向に持っていきました。これも見返すと変なロジックになってますが、ご愛嬌ということで、、、。
 あと、Y宅は空間的範囲として異なる、って理由で違法にしましたが、よく考えると適法な気もしてきてるところです。どうなんでしょうこれ。 
 一番まずかったのが、文章を読み間違えていたところなんです。最初の施工のところでも書きましたが、初め読んだ時に「メールのやり取りが〜」ってところを見落としてたんですね。で、関連性をまだ検討していない+パソコンの差押え、ってとこで、まんまと「よっしゃ!関連性の緩和の論点や!」って思ってしまいました。規範を書いて、さぁ当てはめしようかというところで問題文を見返すと、「データを確認したところ」って思い切り書いてありました。問題文はちゃんと読まなきゃダメですね、、、。予備論文民実でも同じことしてるので。おかげで、4行くらい、時間にして3分くらいロスしました。反省ですね。そんなわけで、そこを消して考えていたところでタイムアップとなりました。
 結局、最後のメールのくだりはどういうふうに使うんでしょうね。後から考えたのは、①パソコンをいじったのが「必要な処分」といえるか、あるいは、②メールだけが必要だったのに、パソコンまで差し押さえたのがどうなのか、のどっちかが問題になりそうかなとは思いました。あってるかは知りません。有識者の方、ぜひご教授ください。

総括

 結論、まだまだ勉強不足だな、ってのと筆力大事だってのを痛感しました。某○しどりさんは、あまりの筆力に腕が8本ある、なんてことがまことしやかに言われていますが、ぜひ2本ほど分けていただきたいものです笑。そんなことはさておき、過去問はちゃんとやりましょう。時間がタイトな入試では時間配分をあらかじめつかんでおくのが答案戦略上やはり有効だと思います。

 今回はここらへんにしておきます。こんな駄文にお付き合いいただきありがとうございました!感想、ここ間違ってるよ等々ありましたら、是非是非教えてください🙇‍♂️

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