100倍、身につく国語力(54)独特表現篇
❤小~高校生と,母親向けのレッスン
(1年間で国語力の悩みが解決できる!)
独特表現篇 ⑮
【独特表現の日本語の特徴】
2.日本語特有の独特表現の実態
(15) 何が「無理、無理!」なの
だろうか?
最近、頻繁に耳にすると気になる言葉
があり、「無理~!」や「無理、無理 !」
というのがあります。これはいったい何
が「無理」なのか、さっぱり見当がつき
ません。現在、高1になる孫娘も、よく
この「無理、無理!」を乱発するので、
その対抗策として私も、ときどき「無理、
無理 !」と連発しながら、内心楽しんで
います。
これ は、特に若い人に多いのかと思っ
たのですが、必ずしもそうではないよう
です。特に、テレビドラマやお笑い番組
を見ていると、出演者の口からがごく
自然に、この「 無理、無理 !」が出て
きて、まるでお笑いを誘っているよう
です。
ところが、この「無理、無理、無理」
というのが連発されると、軽いノリで
会話が進んで行くようですが、ときには
相手は何も言えなくなってしまいます。
なぜなら、会話をしているときに相手
から「無理~!」と言われた途端に、返
する言葉がなくなってしまうので、いわ
ゆる話し合いが継続しなくなるからです。
これではコミュニケーションを図る以前
の問題となり、むしろコミュニケーショ
ンすることを遮断(しゃだん)しているよ
うな気がしてならないのです。
実際、私の場合には、 相手が「無理、
無理 !」と言うと、その時点で相手との会
話を、やめていることが多いのに気づき
ました。なぜなら、どんな場合にそうなる
のか考えてみると、面白いことが分かった
からです。そこで、少し実例を挙げながら
考えてみたいと思います。
【実例1】
上司: きみ、この報告書はいつまで
だったかな?
部下: 来週の月曜までですが。
上司: そうかあ。ただ、ちょっと急
いでくれないかね。
部下: どのくらいで ?
上司: 今日は水曜なので、今週の
金曜までだ。
部下: はあ?それは「無理」ですね。
上司: それは分かっているが、どう
しても急いでいるんだ。
部下: 「無理、無理」ですよ。
上司: 何が、無理なんだ。先方の
都合だから仕方ないんだ。
部下: 「無理」なんです。
上司: 無理を承知で頼んでいるん
だよ。
部下: だから、「無理」です。
上司 : 分かった。無理ならもう頼ま
ないよ。
上の会話は上司の要求に問題があると
はいえ、部下の「無理、無理」だという
発言で、上司をすっかり怒らせてしまった
ようです。まず上司は報告書の提出期限
を早めたことに対して、部下がそれは、
「無理」だとして断る点にあります。
ただ、その断り方が、「無理」という
言葉の一辺倒のため、何がどういう理由
で、そうなるのかをきちんと言うべきな
のです。もし物理的に無理であれば、
「時間が足りないので、無理である」と
か、「修正箇所が多くて手間取っている
から、無理である」というように、きち
んと伝えるべきではないでしょうか。
上の会話のような場合はともかく、普段
の会話の中に「無理、無理」が当然のよ
うに頻繁に使われているが、次のような
例はどう考えればいいだろうか。
【実例2】
① A「来週、山に行かない?」
B 「無理、無理!」
② A 「ちょっと、お金貸して
くれない?」
B 「 無理、無理!」
③ A 「暇だったら、手伝って
くれない?」
B 「無理、無理!」
④ A 「どこかおいしいレストラン
で食べましょうか」
B 「無理、無理!」
⑤ A 「さあ、これから10キロ
走るぞ!」
B 「無理無理」
⑥ A 「手当たり次第に、問題解い
てみよう!」
B 「無理無理!」
上例の「無理、無理」の意味をよく考え
てみると、「① 一緒に行けない。② お金
を貸せない。③ 手伝えない。④ 食欲が
ない。⑤ 体調が悪い。⑥ やる気はない」
などのように考えられます。
これらは、いずれも否定的な意味として、
「無理、無理」にはいろいろな動詞の代わ
りに用いられていることが分かります。
また、「無理」は単独ではなくて「無理
無理」というように連語的(れんごてき)に
なっており、「ムリムリ」や「むりむり」
というようにも表記できるので、強調する
ために独立語的(どくりつごてき)か、副詞
的にも使われているようです。
❤さらに言えば、このような新しい表現
は「無理無理」として、あたかも四字
熟語のように使われているような気が
しますが、相手とのコミュニケーション
を断つような言葉遣いは、気になら
ない方が「無理無理」なのかも知れま
せんね。
アナミズ (2024.04.05)