毒が回った

その家の母親は

亡き夫の仏壇をリモコン置き場にしている。

この前は仏壇の上に洗濯カゴを

またあるときはパソコンを置いてまるで物置のように扱っている。

違和感。

どこか不気味だ。

なんてことのない日常に

潜む密かな毒。

今日は娘のベッドに

ベランダから持ってきた花瓶を置いて飾り付け。

シーツは泥だらけだ。

他人の不幸が好きな分。

嫌がらせには事欠かないようだった。

なぜそんなことをするのだろう。

元々はシンデレラだったのだ。

母親は、夢見る少女だった。

貧乏でも、いつかはお姫様になる予定。

素敵な王子様と結婚して、

裕福で優雅な暮らし。

何不自由ない自由な暮らしを求めていた。

残念ながらそんなの夢物語。

現実とのギャップは

彼女には受け入れられなかったようだ。

彼女は女という部分に異常なくらいに関心を持つ。

気持ち悪いくらいに。

自分の娘が少しでも男にチヤホヤされたなら、途端に激しく嫌悪する。

駅でも、街中でも、なりふり構わず罵倒する。頭を振り乱して大声。

甲高いキンキンした声は頭に響く。

まるで、幸せを欲しがっているようだった。

娘の幸せに耐えきれない。

女の部分に自己の投影をしている。

恐ろしいほどの執着があるようだ。

娘は、この人といる限り幸せになれないと確信している。

やめてほしい。私が誰と付き合うのか。生理の日はいつくるのかなんて。

あなたには関係ない。

私の人生は私のものなの。

あなたが邪魔で憎くてしょうがない。

お金。お金さえあれば、あんたなんかいらなかったのに。

好きになれない。
どうしたら正しくいられるの?

愚かな女。

夢。

彼女。娘である彼女もまた、女なのである。

悲しいくらいに。

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