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1990年8月21日(火)
【南食堂:大野 賢太・柏原 隆一郎・佐々木 雫・山村 静華・久米 直樹・江村 香奈恵】
「ボウリングとかビリヤードとか」
「後は麻雀とかパチンコかなあ」
考えながら発した大野 賢太の言葉の後で、柏原 隆一郎も補足を口にした。ここは『南食堂』。お昼過ぎの時間であり、理系大学生を中心にたくさんの客で賑わっている。本日午前中は迷宮探索を行った悪魔の花嫁部隊は、無事に迷宮探索を終え、一緒にご飯を食べようと『南食堂』を訪れている。迷宮探索は週1回で火曜日と決まっており、それ以外の曜日は戦士3人以外は別々の鍛錬場で鍛錬を行うので、何か申し合わせでもしないと会うことがない。そこで、探索日だけでも一緒に食事でもして交流を深めようという魂胆なのである。もちろんこれは悪魔部隊だけではなく、他の部隊でも行われているようである。この部隊は戦士の大野、柏原、僧侶の久米 直樹が3回生の男性であり、戦士の佐々木 雫、罠解除士の山村 静華、魔術師の江村 香奈恵が2回生の女性である。男性の先輩方が冒険者活動以外の時間で普段何をしているのかを疑問に持った江村の質問に先程答えたのである。
「そうなんですねー。私もボウリングはするかな」
「ビリヤードは少し興味があるかも」
回答を聞いた江村が発した言葉の後で、佐々木も感想を口にする。先程の4つの中ではボウリングが1番メジャーであることは間違いないであろう。ビリヤードも機会があればやっているだろうが、女性にとって麻雀やパチンコは少し敷居が高いと言わざるを得ない。
「じゃあ今度ボーリングかビリヤードに行く時には一応誘うね」
2人の言葉を聞いた大野がこう声をかけてこの話題は終了する。ただ、この誘いが実現したのはかなり先になったのはこの時点ではわかるはずのないことであった。