1990年11月10日(土)
【煉瓦亭:草野 紗江・神田 空】
「あー美味しかった」
目の前の大盛りナポリタンを軽く平らげて神田 空が満足げに声をあげる。ここは喫茶店『煉瓦亭』。ランチ時間でもあり店内は盛況な雰囲気となっている。神田と一緒にランチを食べるべく『煉瓦亭』へとやってきた草野 紗江であるが、自分の普通サイズのカルボナーラよりも後に運ばれてきた大盛りナポリタンを自分よりも早く平らげた神田の食欲とスピードに呆気に取られてしまう。
「相変わらず食べるの早いわね」
「そう、うちの家族みんなこんなもんよ」
草野の質問に神田はあっけらかんと答える。神田は兄弟が多く、5人兄弟の4番目である。兄弟が多いとおかずの取り合い等で食べるのが速くなるんじゃないかというのが神田の持論である。
「まあ、紗江はゆっくり食べていいからね。私まだデザートもあるし」
そういって神田はお冷やを口に運ぶ。その後、神田のデザート、草野もデザートを食べ終わり、食後のまったりとした雰囲気が漂う。その状況で神田が口を開く。
「紗江、ところで原田君とはうまくいってるの?」
「え?あ、まあ上手く言ってると言えばいってるわよ。お互い大学もあるし冒険者もやってるしなかなか忙しくてね」
少し考えた表情を浮かべて草野は神田の質問に答える。それを聞いて神田も口を開く。
「いいなあ、私も彼氏欲しいわー」
会うたびに聞くセリフであるが、神田のルックスと性格であれば作ろうと思えば簡単に作れるだろうにといつも思わされる草野であった。