【エッセイ】海のない町の灯台
京都へ来るのは四十年ぶりだ、と母はつぶやいた。
「こんなに立派な駅になってるんやねえ」
腰を伸ばし、鉄骨のアーチ屋根を見上げながらため息をつく。
驚くのも無理はない。
ガラス張り十一階建ての駅ビルは平成九年の竣工で、母が前に来たという時には、影も形もなかっただろう。まだ市電も走っていたのだろうか。
だけど私は、その時代の姿を知らない。だから、昔と比べて考えるということもできなかった。
今の京都駅は、一つの町みたいだ。
JRもあれば私鉄もある。新幹線も発着する。
百貨店もあればグランドピアノもある。劇場もあればホテルもある。時計台や空中庭園さえある。
壁のようにそびえ立つ大階段を画面にして、LEDの巨大な絵が動いている。
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