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控えめに言ってこの世は地獄、

十一月十八日

自惚れが強い人間程、おめでたくその人は幸福だ。昔は自分が神の子で人類を救うために天降ったと信じた奴もいる、これなどは最大幸福人だ、まったく羨望に価する。

辻潤『ですぺら どうすればいいのか?』ですぺら(オリオン出版社)

午後一時九分。チンした残飯、コーヒー。休館日。布団から出たくなさ過ぎてまた泣きそうになる。泣きそうになっただけで泣いたんじゃないからね。真のペシミストはそうかんたんには泣かない。泣き疲れているし泣き飽きてもいるから。顔で笑って心で泣くが男の美学。シューベルトの「死と乙女」が聞きたい。「私の腕のなかで安らかにお眠りなさい」。とうぶん斎藤元彦と馬鹿兵庫のことは考えないで済む。青梅でのILLAYの最新ライブ動画を公式チャンネルで見た。曲名は「Celeste」でいいのか。セナ様がまた一段と男らしくなっていた。落語風に言うなら「男らしさの国」から「男らしさ」を広めにきたような方だ。僕はまえのサノ菩薩には「母性的包容力」を見たが、こんかいのセナ菩薩には「父性的包容力」を見ている。人は「母性」だけに頼っていては生きられない。セナ様のうちに僕は兄貴的な力強さを見出そうとしている。昨深夜はしょうしょう酒を飲み過ぎたのでアフリカの野生動物のドキュメンタリーばかり見ていた。ぜんぶで五時間以上あるので今週は見るものには困らない。捕獲したレイヨウ(のような動物)をむさぼり食っているライオンを見ていると、生肉も食えない自分が恥ずかしくなってきた。生肉が食べたい。どんな動物の肉でもいい。スーパーで人肉が売られていないことが不思議だ。きょうこのあと北國銀行に行かねばならないのだけどしつこそうな雨降りのせいで行けそうもない。こんな日はセリーヌでも読んで過ごそうか。ILLAYのライブでも見て過ごそうか。「たいていの人間は命令することよりも命令に服従することを愛する」「左派も右派も子作りを手段と考えている点で同じくらいクズ」「時給2500円以下の仕事はぜんぶ消えた方がいい」「少年Aと宮崎勤、八田與一と斎藤元彦」と卓上メモにある。天狗になって空を飛びたい。オイラは天狗さ。鼻にも股間にもペニスが付いている。オイラは天狗さ。地獄の底からやってきた。虹色の屁をこきながらやってきた。愚鈍な者どもよ、ただちに整列せよ。

すらすらとなにかいいたいんだ。ただスラスラとなにかいいたいんだ。ただそれだけが自分のいまの願望なんだ。つまり如何にそれが自分にとって至難であるかということが眼前になにかのようにドカンと横たわっているのだ。どんな風に? ――どんなあんばいに、畜生! ああ・・・・・・と、ええ・・・・・・とその、うむ・・・・・・と、えとせとら的有象無象をすっかりかなぐり棄てて、ただスラスラと、ベラベラとまくし立てたいんだ。

辻潤『癡人の独語』天狗になった頃の話(オリオン出版社)

アル中ジジイは黙ってろ! 酒気帯び執筆の容疑で逮捕するぞ。オイラは怪物君だ。怪物ランドの王子なんだ。死に損ないブルース。なんであれ気付いたころにはもう手遅れ。世界の愚劣化はもうどうしようもないところまで進んでいる。こういう終わり方もあるんだな。たとえ明日世界が滅びようとも俺は便器にこびりついたクソを落とすだろう。僕には他人の痛みが分からない。他人も僕の痛みは分からないだろう。ああなんてこと。その男はいつだって孤絶主義を貫いた。自分と他人の愚鈍さを最後まで憎みつづけた。愚鈍ウイルスの感染を恐れていた。誰とも共感しようとはしなかった。愛されようとはしなかった。尿石のように頑なだった。さんざめくTKG。ゾンビパウダー女地獄。

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