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この「不毛でさえない日常」にはベアトリーチェが必要であって、恋はいつでもグロ注意、「苦しみ」の耐えられない軽さ、お前ごときが「国の将来」を憂えるな、

九月七日

負債とはなにかについてわたしたちが理解していないという事実そのもの、あるいはこの概念の融通無碍であることそれ自体が、負債の力の基盤である。もし歴史の教えというものがあるとしたら、暴力に基盤を置く諸関係を正当化しそれらをモラルで粉飾するためには、負債の言語によってそれらを再構成する以上に有効な方法はないということだ。その理由は、とりもなおさずそうすることで、悪いことをしたのは被害者の方であるとみせかけることができるところにある。このことをよく理解しているのがマフィアである。侵略軍の司令官たちも理解している。数千年ものあいだ、暴力を生業とする男たちは犠牲者たちにむかって、おまえたちはおれたちに借りがあるのだといいきかせてきた。

デヴィッド・グレーバー『負債論 貨幣と暴力の5000年』第1章 モラルの混乱と経験をめぐって(酒井隆史・監訳 高祖岩三郎/佐々木夏子・訳 以文社)

午後十二時二七分。青汁、紅茶、フルーツ&ミックス。「気分上々、俺が歌えば世界も歌う、世界はこれまでになく明るい、病人はいないし泣いている人もいない、戦争もなければ貧困もない、虚しさに苛まれアルコールに溺れているような人もいない、すべての「矛盾」が一掃された世界を生きている、革命は成功したんだ、いまだに信じられない」というような夢を見る。昨日午後三時からコハ氏と二時間半ほど閑談。「学力が低いこと」と「頭が悪さ」は関係があるのか、ということや、権力関係のない水平的人間集団の可能性について話す。ゲンキーでウイスキーを買った。富士暁。658円。二年前に毎日飲んでいたトップバリュブランドのウイスキーそっくり。同じところが作ってんのかな。あのころはほとんど誰とも会ってなかった。三週間以上他人と喋らないことも珍しくなかった。孤独耐性はないよりもあったほうがいい。本は読む人は選び、酒は飲む人を選ぶ。この酒に美味を感じるためには相当の趣味の洗練を要するだろう。美味を感じるのが難しい酒はガバガバ鯨飲できないのでいささか長持ちする。

「甘口」、

他人に笑われる前に自分で自分を笑え、とどっかのお笑い系タレントが言っているのをたまたま聞いた。もっともだと言えなくもないんだけどそれは少しも簡単なことではない。ハゲを気にしている人や無職であることを気にしている人がそれを自ら笑いのネタにするのを見たことがない。少なくとも自分の周りでは。他人に笑われる前に他人を口撃しようする人はけっこういるけど。誰もが「中途半端な自尊心」を守るのに必死だ。「人は悲しい」。酒のせいか、言葉が出方がいつもより悪い。雨に破れかけた街角のポスターあるいはマリコの部屋の電話になった気分。男の色気全開のセナ様に抱かれたい。セナ様のTシャツに生まれ変わりたい。セナ様の体温をいつもずっと感じていたい。「男の臭い」じゃなくて「男の匂い」を感じていたい。きょうも図書館に行こうか。本を愛してもいなければ本に愛されてもいない愚人だらけだろうけど。この地味にエグい残暑が収まらないと古書店に歩いていく気になれない。今月は主として『負債論』を精読するつもり。グレーバーは戦友だ。そういえば隣の金借り爺さんが死んだ母親が所有していたという「琥珀のネックレス」をくれた。売ればそれなりの額になるかもとか言ってたけど、なら俺以上に金欠症の自分が持っていた方がいいんじゃないのか。まあ負い目を感じているのは分かるんだけど。いちおう俺はもらえるものはなんでももらうよ。大して価値があるものとは思えんけど。そもそも本物なのかよ。約束の地は沼だった。やくそくのちはぬまだった。ヤクソクノチハヌマダッタ。恨みます。あたし優しくなんかないもの。「生きていてもいいですか」「そんなことは自分がいちばん分かっているでしょう」。日本縊死会。愚人の王に、俺はなる。愛は地中深くにある希少原石。

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