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学会遠征編ショート版 第24話 機内食
機内での出来事
深夜の便ということもあって機内はすぐに暗くなった。手元に読書灯はあるものの、今は寝ることの方が大事であるため、結局本は読まないことにした。帰ってきてからのお楽しみにしよう。自分で膨らませるタイプの飛行機用枕は、ひれみたいなものがついているせいで首に装着すると違和感をまとわせてくる。頭には機内の枕を使用し、膨らませてしまったU字は腰の疲労を軽減するクッションとして使った。ちなみに、初日のフェリーでも試用したが、同じような感想だった。後でしぼませるのが大変なので、少し早めに起きた方がいいのかもしれない。出発は日本時間0:45に対し、到着は現地時間朝5:00だ。時差は2時間なので6時間15分の空中浮遊となる。とここで機内アナウンスが入る。そして着陸の2時間くらい前に朝食が配られるそうだ。人生初の機内食だ。機内食はあまり美味しくないと言われることもあるそうだが、日本の航空会社ならそのあたりは気にしなくてよいだろう。熟睡しているとスルーされるそうなので、このタイミングでは起きているようにしたい。
寝ようと試みたが、今までホテルの気持ち良いベッドで寝ていたので、なかなか眠りにつけない。せめてリラックスだけでもすることにした。そういえば、精神科で処方してもらった睡眠薬(ラメルテオン)を持っていることを思い出した。しかしそれは上の荷物置き場にあるリュックの中である。毎日毎日使っているものではなく、必要な時だけ飲めばいいと言われているものなので無理する必要はない。それに、それを飲めばひとたび6時間はぐっすりなのでみすみす機内食を逃してしまう。もっと飲むべき時のために今回は飲まないことにした。実際はただ単純にリュックから取り出すのが一苦労なだけである。また、上空まで飛んだところでwi-fiが使えるともアナウンスが入った。国内便では経験したことなかったので少し驚いた。とはいえ日本にいる知り合いは皆ねている時間なので現状報告しても迷惑なだけだろう。今ブルーライトを浴びてしまってはますます寝られなくなるということでデジタルデトックスの時間とした。左隣のおじさん(日本人)が席を立ちたがっていたので頑張ってスペースを作った。窓側の席はトイレに行くのも一苦労だ。そのおじさんが戻ってきたときは先に自分が席から外れておじさんが中に入りやすいように配慮した。このような連係プレーが必要なくらい狭いのだ。機内サービスの飲み物はオレンジジュースにしておいた。ノンカフェインでさらっとしたものと言えばこれだろう。いつでもよく見るミニッツメイドの紙パックの奴から注いでくれたのだが、これがやはりめちゃくちゃおいしい。オレンジはさっぱりしていて逆に目が覚めるのかもしれないが、それでも飲みたいものを飲むのが一番だ。
数時間後、暇だったので瞼を開けてみた。個人用モニターで、現在の飛行機の位置を調べてみたら、ちょうど台湾の上空を通過した後だった。つまり、3時間もあれば台湾に行けてしまうということである。国内便で中部国際空港から那覇や千歳までだいたい2時間くらいと考えると、全然無理せず行ける時間である。こんなの、地元の岐阜から車で東京まで行く方が苦行なくらいだ。いつかは台湾も行ってみたい。そして時間を待たずに部屋が明るくなった。CAさんから餌付けされる時間である。順番にお弁当が配給されていった。恒例の"Beaf or fish?"を期待していたが、選択の余地などなかった。そのメニューは、ロールパンに卵焼き、チキンに、ヨーグルトと一口フルーツ各種という、洋風の朝食であった。ドリンクは日本茶にしておいた。思っていたよりおいしく、力がみなぎってくる気がした。日本茶もお替りした。睡眠時間は短いものの、アドレナリンが分泌されたかのように体が軽く眠気もなく、元気な状態になってしまった。そんな万全な状態で予定時刻よりも少し早く着陸した。まだタイ時間で5時前なので暗くてよくわからないが、確かにここはタイである。降りるときは左隣のおじさんと少し会話をした。どんな用事で来たのかと聞かれたので学会発表があると答えた。聞き返したら、彼は出張のようだった。おそらく、月曜日からの用事で、前日入りしたかったのだろう。僕と同じようなものだ。そして、荷物を回収し、忘れ物が無いかをチェックして飛行機を降りた。今度こそあの右隣のアジア人とはお別れだ。今後に度と会うことはないのだろうと思うと悲しいが、連絡先を交換するほどでもなかったのだ。ここから先は、日本語が通用しない。日々訓練してきた英語力が試される時だ。