300字小説『夢ならいいのに』
「多くの男が言うの。自分は母親から生まれたって」
「ふぅん」
「馬鹿よね。みんな女から生まれてんのに。何を勘違いしてるんだろ」
「そうね…で?」
「なぁに」
「どうして私の指に赤い糸を」
「だって。私とあなたは運命共同体でしょ」
照れくさそうに笑いながら、反対側の糸端を自分の小指に結んだ。
「逃げないでね。私には、もうあなたしかいないから」
「…逃げたら、どうするつもり」
「うーん…どうしようかな」
静かに笑いながら、寄りかかってきた。
「どこへも行かないと約束して」
「その前に教えて。これは…現実?」
「どうかな…ふふ」
思わず、自分で自分の小指を噛んだ。
鉄っぼい味がする。
結ばれた赤が、更に濃さを増した。
夢ならいいのに。
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